心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

目の前でクラスメイト同士のケンカが起きそうだった話

男組(1) (少年サンデーコミックス)

 私が中学生の時の話です。

 昼休みの時間、私の前の席に座っていたA君と、少し離れた所で友達と雑談していたB君が、ちょっとしたことで言い合いになりました。

 何がきっかけでそうなったのかはわかりませんが、私が気づいた時にはかなり険悪なムードで、すでに一触即発の状態。

 ただ、A君はちょっと悪ぶった感じではあるものの、根は優しく、喧嘩するような人ではありませんでした。というより、ぶっちゃけ喧嘩する度胸があるような人ではありません。

 対するB君は、空手を習っていて、ガチのヤンキーではないものの、学校内ではそこそこ強キャラで、喧嘩に対する心理的ハードルは低いほうだったと思います。つまり、やろうと思えばいつでも喧嘩できるタイプ。

 双方の力関係は、明らかにB君に分があったのですが、A君も悪ぶったキャラで通している以上、面子もありますから、引くに引けません。お互いに「なんだオイ」「やんのかコラ」といった煽りあいがエスカレートしていき、とうとうB君が立ち上がって、A君の目の前まで歩いてきました。

 A君はそもそも喧嘩するつもりもなく、勝てる相手ではないことがわかっていますから、立ち上がって向かい合うことはしません。椅子に座ったままB君をにらみ返すのが精いっぱいです。

 そんなA君の態度に、怒りを募らせたB君が迫ります。肩を押したり、頭を小突いたりして「やってやるよ、ホラかかってこい」みたいなことを言いだします。

 そうなると、A君はもうだんまりを決め込んで俯くしかできません。ここまで事態が荒れるとは思っていなかったのでしょう。やがてB君はA君の頭を押さえて、軽くですが壁にゴンゴンぶつけ始めました。

 私は、普段よく話をするA君がそんな目にあっているのを見て、

 「まぁまぁB君、そんなに怒らずに。A君もそこまで本気じゃないから。ね?俺もあやまるからさ、今回は俺の顔に免じて、コトを収めてくれないかな」

 って言えたらカッコいいのになと思いながら、でもB君の矛先が自分に向いたら怖いので、固まっていました。

 私は悪ぶったキャラでもなく、そもそもケンカが嫌いな臆病者なので、そんなかっこいい真似ができるほどの度胸がありません。

 そこへ登場したのが、B君の友達で一緒に空手を習っているC君でした。

 「まぁまぁB君、もういいだろ。A君も本気じゃないんだ。こんなとこでケンカしたってしょうがない、許してやれよ」

 というようなことを言ってB君をなだめました。C君かっこいい。

 B君は「チッ、度胸もねぇくせにケンカ売ってくるんじゃねぇよ」

 とかなんとか言いながら、その場を離れました。A君はほっとしたのか、うつむいて少し泣いていました。

 私はそんなA君にかける言葉も見つからず、B君との間に割って入ることもできなかった自分を情けなく思いながらも、実際にケンカが起きなかったことにほっとしていました。

 その出来事は当然のことながらC君の株を爆上げし、瞬く間に女子の間で噂が広まりました。たぶん相当モテたんじゃないでしょうか。私は陰キャのオタクだったので、そういう世界の情報はあまり入って来ませんでしたが。

 今朝、トイレに籠りながら、そんな昔の出来事を思い出しました。なんでだろう?

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