NintendoSwitchのゲームソフト『スプラトゥーン2』をほぼ毎日プレイし、日々戦いに明け暮れる中、ふと二次創作の意欲が湧いてきて、スプラトゥーンの世界を題材に物語を書いてみたいと思いました。
プレイ中、思いのほか立ち回りがうまくいった時や、絶体絶命のピンチを切り抜けた時など、それらのシーンがドラマ仕立てとなって、断片的に脳内に湧き上がってきます。それを基に構成したエピソードを、単発でシナリオ形式にしていこうと思います。
(物語の中には、公式にないオリジナル設定も出てきます)
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エピソード_86 「新人」
デカ・タワーのロビーには、今回のナワバリバトルに参加するプレイヤーたちがたむろしている。その中に、数人の取り巻きを従えたイカがいた。
ギアブランド「タタキケンサキ」を擁する「ケンサキコーポレーション」の御曹司、ランク78のケンサキ・ジュンである。ギアはもちろん全てタタキケンサキで統一し、ブキもスプラマニューバーベッチューを主に使う。
普段のバトルは、ほとんどガチマッチに出入りしているジュンだが、今日は息抜きでナワバリバトルに参加していた。ロビーを見回すと、よく見る顔が並んでいる。その中にひとり、見慣れないタコがいた。
ジュン「新しいタコがいるな」
取り巻きの一人、コブが答える。
コブ「何日か前から、ナワバリに出入りしてる”ハチロウ”って新人だよ」
ジュン「ふん。で、ブキは?」
コブ「オーバーフロッシャーを使うらしい」
ジュン「オフロかよ。後衛要員だな」
コブ「普通はそうだよね。でもアイツ、ガンガン前線に上がってくるタイプだって聞いたけど」
ジュン「オフロで前衛?ブキの使い方を知らねぇな。勢いと運だけで上がってきたクチか」
コブ「かもね。ま、噂で聞いただけだから、実際どんなスタイルでバトルするのか知らないけど」
ジュン「噂ってのは尾ひれがつくもんだ」
コブ「確かにね。ジュンがマークするほどの相手じゃないと思うよ」
ジュン「だろうな」
ジュンはハチロウに近づき、軽く手を挙げる。
ジュン「よう、新人さん、強いんだって?」
ハチロウは驚いた顔でジュンを見る。
ハチロウ「え?あ、そ、そんなこと、ないよ。まだ、ランク8だよ」
ジュン「でも、噂になってるぜ。オフロ使いのハチロウくん」
ハチロウ「そう、なんだ……おれ、オフロしか、使ったことないから」
ジュン「へぇ?普通はわかばシューターから入るもんだけどな。いきなりオフロなんて聞いたことないぜ」
ハチロウ「そう、らしいけど、ここへ来る、前からオフロ、使ってたから……」
ジュン「ハイカラスクエアに来る前から?どういうことだ?」
ハチロウ「いや……どうって、言われても」
ジュン「まぁいいや。オレはジュンっていうんだ。いつもはガチばっかやってるんだけど、今日は息抜きでナワバリだよ。もしバトルで当たったら、よろしくな。手加減してくれよ、ハチロウくん」
ハチロウ「あ、こちら、こそ……よろしく」
手を振って、仲間の元に戻るジュン。コブに耳打ちする。
ジュン「あいつと当たったら、とりあえず潰しとくぞ」
コブ「また新人潰し?ジュンも好きだよねぇ」
ジュン「タコの分際で、噂になってるのが気に入らねぇ。噂の新人を潰せば、次に噂になるのはオレだ」
コブ「フフ、そういうの、僕も嫌いじゃないけど」
やがてプレイヤー数が揃い、メンバーがスタート地点に転送される。今回のステージはコンブトラックだ。ジュンは仲間3人と共にチームを組んでいる。バトル開始の合図が鳴った。
ジュンはマニューバーでステージ中央付近に切り込み、順調にキル数を稼いでいる。後衛の塗りは、.52ガロンベッチューのコブと、ダイナモローラーベッチューのヤケが担当し、もう一人のジンが、ジュンと共に前線を押し上げる役を担っている。青いインクが、順調に自陣を拡げていく。
敵陣の高台を見ると、ハチロウがオーバーフロッシャーで塗りを拡げていた。黄色いドロップが地面を転がっていく。
ジュン「おいジン、あいつだ。ちょっと遊んでくるわ」
ジン「おう」
センプクでハチロウに近づくジュン。しかし、さっきまでハチロウがいた高台には、すでにその姿はない。
後方から、”やられた”のシグナルが聞こえた。倒されたのはコブだ。
ジュン「なにやってるコブ!」
コブ「すまない、アイツにやられたよ」
ジュン「あのタコか?」
コブ「ああ、どこから撃たれたのか、全く見えなかった」
ジュン「まぐれだ。探して追い込むぞ」
コブ「了解」
インカムから指示を出す。コブのランクは46。ジュンに比べればまだ低いが、ランク8の新人が簡単に倒せる相手ではない。塗りのショットが、たまたま当たっただけだろう。そんなことを考えながら、ジュンはハチロウを探した。探しながら、次々に相手チームのメンバーをキルしていく。
今回の相手チームは、ハチロウの他にチャージャーとスピナー、それとシューターだ。それほど強いメンバーはいないようである。安心して新人のタコを潰しにいける。
そこへ、再び”やられた”のシグナル。今度はジンだ。
ジュン「どうしたジン」
ジン「タコにやられた」
ジュン「おまえが?」
ジン「あいつヤバイぞ。動きが読めない」
ジュン「バカな!相手はランク8だ。たかがオフロ使いのタコだぞ」
ジンのランクは72。ジュンと肩を並べるほどの腕の持ち主で、プライムシューターベッチューの使い手である。ジュンの右腕とも言えるチームメイトだ。
ジュン「見つけた!ヤツだ」
”カモン”のシグナルでジンを呼びながら、ハチロウに近づくジュン。
ジュン「中央の山にコブがいる。3人で囲むぞ」
ジン「わかった」
中央の山の斜面を塗りながら登っているハチロウに、ジュンが迫る。キューバンボムでけん制しつつ、逃げ道を山の頂上へとコントロールしていく。上にはコブがセンプクしている。反対からはジンが近づいているはずだ。
ジュン「噂どおりか、単なる噂か、確かめてやる」
ジュンの追い込みで、頂上へ逃げていくハチロウ。3人の同時攻撃が始まろうとしている。
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さて、ハチロウの運命やいかに。
改2(2019/05/07)