心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

【二次創作】オーダイバー #4【スプラトゥーン】

 

スプラトゥーン ブキコレクション2 [2.バケットスロッシャー](単品)

 ※前回のあらすじ

 今回は、前回までのストーリーを一旦離れて、ハチロウの過去の物語を展開します。

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 エピソード_35 「祖父」

 薄暗い部屋。小さな工場の建屋のような造り。

 波打つスレートの壁には、いくつものひび割れや、インクの跡が見える。

 明滅するモニターの前で、ぶつぶつと何か独り言をつぶやく、老いたインクリング。分厚いレンズの、いわゆる牛乳瓶底メガネに、長く伸びた白い眉がかかっている。口元を、短いひげが白く覆っている。わざわざ生やしているわけではなく、何日もひげを剃り忘れてしまったような、無造作に生えた無精ひげである。

 老人の後ろにある作業台には、様々なブキの部品や、インクを入れたバケツが雑然と置かれている。中には、組み立て途中のブキもあり、何本もケーブルが伸びて、箱形の機器に接続されている。

 部屋の扉が開き、逆光でシルエットになった人影。小さな子どもだ。

 「じいちゃん」

 子どもが老人に呼びかける。

 「ハチロウか、ここは危ないから来ちゃいかんと言っただろう」

 「おれ、ここ好きだから」

 「仕方ないのう……誰の血を引いたんだか……机の上の物には触るんじゃないぞ」

 「うん」

 老人は、幼いハチロウのほうに目をやることもせず、モニターを見つめながら話している。

 ハチロウもそれに慣れているのか、勝手に部屋に入り、壁際の棚に置いてあるものや、机の上にあるものを嬉しそうに眺めている。

 「じいちゃん、とうちゃんはどこ行ったの」

 「んん?とうちゃんはな、仕事で地上に行ったんじゃ」

 「ちじょう?」

 「ここより明るいところじゃよ」

 「ふーん」

 「おまえも地上に行きたいか?」

 「知らない」

 「しら……そうか、地上がどんなところか知らなきゃ、行きたいかどうかもわからんじゃろうな」

 「うん」

 しばらく沈黙が続く。老人はモニターを見つめ、ハチロウは老人の肩越しにモニターを見ている。

 「あっ!」

 老人が突然、驚きの声を上げる。

 「わっ!」

 その声に驚いたハチロウが、後ろにのけぞった拍子に、机の上にあったバケツに手があたり、インクが派手に飛び散った。

 「すまんすまん、びっくりしたのう」

 老人はようやくモニターから目を離し、椅子から立ち上がって振り向いた。

 「びっくりした」

 ハチロウはさほどびっくりした様子もなく、落ち着いた表情で答えた。

 「インクがこぼれてしもうたか。やれやれ、片づけんとな……」

 机の上で倒れたバケツと、床に広範囲に飛び散ったインクを見ながら、老人は部屋の隅の掃除道具を取りに行こうとした。しかしふと立ち止まり、改めてバケツとインクを見る。

 「ん?……んん?これは……面白い!」

 ハチロウは、老人が何を面白がっているのかわからない様子で、老人の代わりにモップを取りに行く。

 「ひらめいたぞ!ハチロウよ、面白いもんが出来上がりそうじゃ!」

 「なに?」

 「新しいブキのアイデアじゃ。おまえがバケツを倒したおかげでな」

 「ふーん」

 「これは今までのブキの常識を破る、ブレイクスルーじゃ!」

 「へーぇ」

 何もわかっていないハチロウは、適当に返事をしながら、床に広がったインクをモップでふき取っていた。

 老人――――マツカサ・ヒロキは、ハチロウのことなどすっかり忘れてモニターの前に戻り、キーボードを叩き始めた。

Ξ:)Ξ:)Ξ:)Ξ:)Ξ:)Ξ:)Ξ:)

 幼いハチロウと生活していた老人、マツカサ・ヒロキとは一体何者?

 次回未定!

※登場するキャラクター、設定などはスプラトゥーン公式とは無関係です。