心は空気で出来ている

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カラスの生とカメの死

カラスの教科書 (講談社文庫)

カラスの教科書 (講談社文庫)

 

 今朝、通勤途中で通った、田んぼの真ん中を走る道の端に、何か落ちていました。

 その何かの横にカラスがいました。

 近づいていくと、その何かは、黒っぽい色と、赤、ピンクがごちゃごちゃした色でした。

 ああ……何かの死骸だ。猫かなぁ。猫はやだなぁ。

 車はどんどんその死骸に近づいていきます。見たくないけど見てしまう。

 カラスは、その死骸をついばんでいたのでしょう。車が近づいたので少し逃げましたが、ほんの1歩か2歩で、車が去ったらすぐまたその死骸を頂こうとしている様子でした。

 その死骸は、黒っぽいものがいくつかに割れて、そこからピンクの肉塊がはみ出している状態でした。すぐにはそれが何なのかわかりませんでしたが、どうやらカメのようでした。カメが車に轢かれて、甲羅がバッキバキに割れたのでしょう。

 田んぼのすぐそばで、近くには用水も流れています。カメはそこから出てきて、道を渡ろうとして車に轢かれたのでしょう。気の毒なカメ。

 カラスは、気の毒なカメの死骸を、当然のように朝食としてついばんでいました。そりゃそうです。カラスにしたら、労せずして新鮮な肉を食べられるチャンス。放っておくわけがありません。

 カメの死骸をついばんでいたカラスは、その時は1羽だけでしたが、そのうち他のカラスも見つけて、何羽も集まってすぐにカメの死骸は片づけられるのでしょう。カラスは自然界の掃除屋です。昔は、戦争や病気、飢餓で死んだ人間も、たくさんカラスに片づけられたと思います。

 おそらく、ほんの数時間前まで、生きてのそのそ歩いていたカメは、突然の交通事故で死に、その肉体をカラスに食べられることになったわけです。

 カメの死は、カラスの生に取り込まれました。そのカラスもいずれどこかで死を迎え、動物の餌になるか、木や草の肥やしになるのでしょう。

 残酷、悲惨、無情といった、人間の感覚とは関係なく、淡々と循環する生がありました。

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