心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

【映画鑑賞記】「HUMAN LOST 人間失格」/AKIRA×文豪×PSYCHO-PASS

human-lost.jp

 観てきましたので、ざっくり感想をば。

 作品の解釈が偏ることは、私がおっさんであることを理由にご容赦くださりまし。しょせん解釈とは、知っていることに照らし合わせてのみ成立するものであるからして。

 舞台となるのは昭和111年という架空の日本。ベースとなる世界観はPSYCHO-PASSの世界をさらに進めたような、超管理社会。世界大戦を経て復興したものの、環境汚染と貧富の格差が蔓延するディストピアです。つまりブレードランナー的な、そしてニューロマンサー的な世界ちゅうことです。

 主人公はクスリ漬けになりながら絵を描くだけの毎日を送る廃人、大庭葉蔵。その友達は肉体労働に従事しながら、格差社会をぶち壊すという夢(?)を持った暴走族の青年、竹一(たけいち)。

 暴走族?そう、未来の暴走族といえばAKIRAです。竹一は仕事の事故で体の半分を失い、それを機械化で補っています。つまりコイツのモチーフは鉄男と見た。

 葉蔵は、ぼんやりした廃人ですが後に覚醒し、人間を超えた力を持つにいたります。となるとコイツはアキラ。

 事故で覚醒した葉蔵を、明るい未来に導こうとする女性・柊美子(ひいらぎよしこ)は、たぶんキヨコ。葉蔵と同じく、人間を超えた能力を持つ特異体質です。この特異体質者のことをナントカって呼んでたけど忘れた。

 逆に、葉蔵を破滅の未来へ導こうとするのが、葉蔵、美子と同じ特異体質の男・堀木正雄(ほりきまさお)。彼はもともと体制側の人間で、人々を(事故による)死と病から解放したシステム「S.H.E.L.L.」を作った人間でもあります。

 彼はAKIRAの登場人物に例えるなら、さしずめタカシといったところでしょうか。となるとマサルは出てこないな。強いて言えば、体制に逆らえない渋田あたりかな。

 システムの暴走で人間が怪物に変異した「LOST体」を処理する部隊をまとめる厚木は、当然大佐ということになりましょうな。美子を娘のように大切に思っているのだなというのがいちいち伝わってきます。

 制作のポリゴン・ピクチュアズといえば、TVアニメ版の「亜人」や「シドニアの騎士」で、そのポリゴン感と動きが「Peeping Life」を想起させて、シリアスなアニメでもなんだか面白く見えちゃう、ということをかつて当ブログで書きました。

www.gokuma.work

 しかし、この作品ではアクションシーン多めだったせいか、あるいは「亜人」や「シドニア」よりもキャラ造形のCGっぽさが薄まっていたのか、「Peeping Life」感に邪魔されることなく、作品を楽しむことができました。

 いまふと思ったけど、たぶんライティングの進歩でより自然な陰影が作れるようになったんだなきっと。

 そもそも私は太宰治の「人間失格」を読んだことがないので、この作品がどの程度原典のテーマやらなんやらを踏襲しているのかわかりません。青空文庫で読んでみようと思います。

 あと余談ですが、細かい話を。

 物語の初めのほうで、竹一がS.H.E.L.L.システムのパンフレットみたいな冊子を見ながら「俺たちは死ぬに死ねない道化だよ」というようなセリフを言うシーンがあります。(うろ覚えなのでセリフは違うかもしれない)

 そこで表紙の「SHELL」の文字の「S」が陰に隠れて「HELL」に見える場面がありました。なるほどこれは暗に「生き地獄」を表した演出なのだなきっと、と感じました。

 以上です。

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