『三体』読み終わりました。この物語の続きが早く読みたくてウズウズしています。来年には三部作の中編『暗黒森林』の邦訳が出るということなので、今から楽しみです。
「訳者あとがき」で大森望さんが”鈴木光司『リング』ばりのサスペンス”と書いておられて、やはりそうか!と膝を打った次第。この喩えが、『三体』のどのあたりに該当するかは読んだ人ならわかると思いますが、私も読みながら「この不気味さは『リング』を髣髴とさせるなぁ」と思っていました。そう、カウントダウンのくだりです。
前回の感想ではまだ5分の2が残っているところでしたが、その残り5分の2でやはり予想を上回る展開と種明かしがあり、唸らされました。
この作品を端的に表現するなら「荒唐無稽」の一語に尽きます。
SF小説とは基本的に荒唐無稽なものではないのかと思われるかもしれませんが、この作品のスケール感、道具立ての緻密さ、そしてそれらを引っ張る人間描写の少々乱暴な側面は、SF作品における「荒唐無稽」のハードルを間違いなく引き上げてしまったと感じました。
エンタテインメント作品としてのあらゆる要素を盛り込んだSF大河ドラマ。少々大袈裟とも取れる表現ですが、この作品を表すにはそれくらい言わないと間に合わないのではないでしょうか。
読んでいるうちに眠たくなりそうな、難しい科学理論を展開しながら、それが実現するギミックの荒唐無稽さには、正直「んなアホな」と思うくらいのデタラメ感がありますが、すでに物語のスケールがでかすぎて「リアリティ」など気にする余裕がありません。ここまで来たら何でもアリと思うしかない、という感じがします。
しかし、その「何でもアリ」にも(科学的な正確さはおいといて)仕掛けと理屈の裏付けがあるという、SF作品としての面白さをきっちり踏まえた「何でもアリ」です。
あとがきによれば、続く『暗黒森林』は、この『三体』の5割増し、完結編の『死神永生』は倍増ということです。果たしてそんなボリュームについていけるのかどうか、一抹の不安を抱えながらも、この物語を最後まで見届けたいと思います。
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