心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

おっさんが生まれて初めてセーラームーンを観たら思わず声出して笑った

美少女戦士セーラームーン 25周年記念Classic Concert ALBUM

 『美少女戦士セーラームーン』というアニメをご存じだろうか。

 リアタイ世代の方なら、今さら何を……というくらい、義務教育レベルで有名なアニメだ。私の世代でいうと、『機動戦士ガンダム』並みに世界レベルでメジャーな作品と言えるだろう。世代でなくとも、タイトルやキャラクターのビジュアルくらいは知っている方も多いと思う。

 超ヒットアニメなので、後続シリーズや劇場版、実写版、ミュージカルなども制作されている。そのセーラームーンの最初の作品、いわゆる「無印」のテレビシリーズが、テレビ愛知で放送されている。

 私は全く世代から外れており、また主な視聴者層である少女でもなかったので、アニメ本編は今まで一度も観たことがなかった。メインキャラのビジュアルや主題歌くらいは知っている、という程度だ。

 先日、たまたまテレビをつけたら、セーラームーンが放送中だった。テレビ放送がデジタル化される前の作品なので、画面のアスペクト比はアナログ放送時代の4:3だ。画質も少々ぼやけていて、いかにも昔のアニメといった風情。観たことはなくても、懐かしさを感じる画面だった。

 それで、何気なくそのまま観ていたら、ついつい引き込まれてしまって、途中から本気で爆笑していた。私の中のセーラームーンのイメージが、根底から覆される展開だった。もちろん、全体的にシリアスなストーリー展開なのだろうが、私が観た回はとにかくツッコミどころが多すぎて、セーラームーンとはこんなアニメだったのかと驚いた。

 途中から観ていたので、細かいストーリーはわからないが、うろ覚えの内容を説明すると、まず洋風の墓地に女の子と牧師がいる。そこで牧師が天使のような羽の生えたボクサーに変身させられる。知らない人には、この時点でもう何のことやら分からないと思う。

 悪者っぽい青年が、何らかの邪悪な力で、牧師を無理やり怪人に変身させてしまうのだ。そこへ駆けつける主人公の月野うさぎセーラームーンに変身して、牧師に襲われそうな女の子を助けようとする。しかしセーラームーンは、ボクサー怪人に変身した牧師に動揺して、私はボクシングなんかできない、みたいな弱音を吐く。

 いやボクシングできなくても戦えるやろ?と思いながら観ていると、怪人と化した牧師は自らを「ボクシー」と名乗る。牧師だけにボクシー。ダジャレか。

 そして動揺して弱音を吐いているセーラームーンに向かってボクシーが放つ台詞が

 「何をごちゃごちゃ言っとるんだぎゃぁ!」

 である。なぜに名古屋弁

 連続ロケットパンチのような攻撃を、ヒラリと華麗にかわして、セーラームーンも負けじと決め台詞を放つ。

 「神聖な場所で悪事は許さない!」

 いやあんた今立ってんの墓石の上やで?

 人様の墓標を踏み台にしといて「神聖な場所で悪事は許さない!」とか言われても。

 

 そんな決め台詞を吐いておきながら、ボクシーの攻撃に成す術なく逃げ回るセーラームーン。あわや危機一髪、というところで登場するタキシード仮面。

 ほほう、これがあのタキシード仮面か。動いてるところを初めて見た。古谷徹さんが声をあてているということは知っていた。セーラームーンをお姫様抱っこして、ボクシーの攻撃をかわす。そして「こんなか弱いお嬢さんをうんたらかんたら…」とキザなセリフを吐く。

 それから、なんだかよくわからないけど、ボクシーの体の中から宝石、たしか虹水晶とか言ってた気がするが、それが出てきて、ボクシーは牧師に戻る。そして、出てきた虹水晶をタキシード仮面がかっぱらって

 「ハハハハ、虹水晶は私がいただく」

 と言って姿を消す。悔しがる悪者。タキシード仮面て、怪盗だったの?

 いろいろとわからないところはあるものの、キャラクターたちが真面目にふざけている感じが面白かった。

 ざっくり観ただけだが、ヒット作だけあって、後年の少女向け作品に多大な影響を与えているのだな、ということが見て取れた。プリキュアシリーズや、ディズニーチャンネルで放送されているフランスのアニメ『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』という作品も、このセーラームーンの影響を受けていることがわかった。おそらく他にもたくさんの作品に、セーラームーンで発明された要素が取り入れられているのだろう。

 これまであまり縁のなかったセーラームーンだが、少女向け作品の世界では、男子向け作品におけるガンダムエヴァンゲリオンなみに、エポックメイキングな作品だったのだな、と思った。少女向けアニメの、歴史の一端が垣間見えて、とても勉強になったような気がした。