先月、最新刊の第4巻が出たので読みました。
『シドニアの騎士』の次の作品ということで楽しみにしていた今作ですが、期待を裏切らない面白さです。
人工天体「アポシムズ」の地表、恒常的な厳寒の世界で、太古の遺跡を掘り起こし、その資源や技術を利用しながら、細々と生き延びる人類。そんな世界に君臨し、地下世界の開放を唱えながら人々を虐げる皇帝と、反逆者たちの戦いを描いています。
弐瓶勉作品ではおなじみの、「超構造体」や「エナ」、「ヘイグス粒子」も登場します。「人形病」は『BIOMEGA』に登場した「N5Sウイルス」によるドローン禍、正規人形は『アバラ』に登場した「ガウナ」にその起源を見ることができます。
この作品を読んで、最初に思ったのが、キャラクターの顔の変化です。特に女の子の顔の描き方を、ずいぶん変えたなと思いました。全体的に目が大きく、顔も丸く描かれていて、可愛らしさを出しています。
それと、画面の白さ。『BIOMEGA』までは、画面が黒いイメージがあった弐瓶作品ですが、『シドニアの騎士』から徐々に白さを増していき、この『人形の国』では、設定が冬の世界ということもあり、ほぼ白。わりかし極端な変化です。
世界を構築するオブジェはほとんどが無機物や機械なのですが、それらがまるで自然界の生き物のように描かれます。大小さまざまな自動機械、巨大な構造物、樹木の根のように伸びる配管。それらが大自然の営みのように人間を取り囲み、人はそれらを恐れ敬い、また利用しながら生きています。
この世界観は、『風の谷のナウシカ』を思わせます。背景を見ると、まるでナウシカの一コマを見ているような気がしてきます。バトルシーンや人物以外の、静かなシーンを描くコマでは、確かに「ナウシカみ」があります。
ところで、私はこの『人形の国』の副題「APOSIMZ(アポシムズ)」を見た時、どこかで見たような……と思いました。その後、『シドニアの騎士』を読み返していたら、シドニアと共に地球を飛び立った播種船「アポシムズ」が一度だけ登場していました。登場といっても、シドニアのモニター内に映った姿だけですが。
もしかすると、この「アポシムズ」のなれの果てが、人工天体「アポシムズ」なのかもしれませんね。
クラークの法則で有名な一文「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」を、地でいくようなアポシムズの世界。今後の展開が楽しみです。