心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

【ショートショート】いつかその日に帰るまで

キミにカエル。

キミにカエル。

 

 

 雪の積もる閉ざされた気持ちは

 いつか暖かい陽射しで解けるよ

  めげずにチャレンジしますショートショート。たくさん書いていれば、そのうちいいものが書けると信じて。

*****

 怪物が現れた。

 ジャックたちは死に物狂いで逃げたが、仲間たちが数人、怪物に喰われてしまった。平和だった日々に突然現れた怪物は、ジャックたちの暮らしをことごとく破壊していった。

 怪物はジャックたちより何倍も体が大きく、力も強い。力の弱いジャックたちには、とうてい歯向かえる相手ではなく、ただ逃げ惑うしかない。

 「昨日はオータがやられた。今日はヤクシーまで……このままじゃ私たち、大人になる前に皆殺しだよ」

 ようやく怪物の追跡から逃れた後、マージャが涙ながらにつぶやく。

 「ジャック、私たちはただこうしてあの怪物に食べられるだけの運命なのかな……」

 ジャックは唇を噛んだまま虚空をにらんでいたが、マージャの言葉に我に返った。

 「そんなバカなことがあるもんか。俺たちは必ず大人になって、怪物を倒すんだ。そしてみんなでまた平和な暮らしを取り戻そう」

 数日後、マージャが姿を消した。

 ジャックたちは、マージャも怪物に喰われたのだと思い、みんなで追悼の儀式を行った。しかし、その夜ジャックが休んでいると、草陰からマージャの声がした。

 「ジャック……私よ、マージャよ」

 「マージャ!怪物にやられたんだとばかり思っていたよ」

 「私……私、なんだかおかしいの。体が大きくなってきたのよ」

 「それはもうすぐ大人になるってことじゃないか。姿を見せてくれよ」

 少しの沈黙。草陰の向こうで、かすかにマージャの動く気配がした。

 「でもね、本当に変なのよ。体から、おかしなものが生えてきてるの」

 「おかしなもの?」

 「そう、体の横から、なんだかあの……みたいな……尻尾も短くなってきたわ」

 「尻尾が……?きっとそれも大人になるための変化なんだろう」

 「そうかしら……そうだといいけど」

 「とにかく無事でよかった。顔を見せてくれマージャ」

 しかし草をかき分けて現れたのは、あの怪物の顔だった。

 「あっ……おまえは!バカな!」

 「ああ……ジャック、やっぱり私は変なのね?」

 「本当にマージャなのか?」

 「そうゲロ……よ、私、マージャよゲロゲロ」

 「そっ、その鳴き声は、怪物と同じじゃないか」

 「うそ!そんな……私、怪物じゃないゲロ」

 「そんな……俺たちは一体……うわぁぁぁ!」

 ジャックはパニックに陥り、マージャの声で話す怪物から逃げようとした。

 マージャだった怪物は、咄嗟に口から長く伸びる舌を出し、ジャックを捉えると一瞬で飲み込んでしまった。

 「ああ……ジャック、なんてこと……そんなつもりじゃなかったのゲロゲロ」

 怪物はゲロゲロと嘆きながら、水田の草むらへと消えていった。

*****

  田んぼから賑やかな合唱が聞こえてくる季節です。動くものならなんでも食べようとする彼らの悲しい性を思うと、あの合唱も哀調を帯びているように聞こえる……かもしれません。

 ではまた!

オレ、カエルやめるや

オレ、カエルやめるや

 

 

耳付きアニマル傘 カエル EV5129

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カエルの事実

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