「一生綺麗だって思ってくれるのならいいな」ごくまです。
昭和50年代、私が小学2年生の頃、口裂け女が大流行しました。
まだ幼かったので、テレビや新聞でどのように扱われていたのかは覚えていませんが、クラスの友達の間でもずいぶんと噂になっていたのは覚えています。
みんなわりとマジで怖がっていましたが、私は幼少期から『ゲゲゲの鬼太郎』などの妖怪話が好きで、そういう話はテレビや漫画の中だけのフィクションだという冷静な受け止め方をしていたので、あまり本気にしていませんでした。
それでも、毎日のように口裂け女の話題でみんなが盛り上がるので、噂話に興奮することが楽しくて、そこそこ話題に乗っかっていました。
ただ、クラスの中には本気で口裂け女を信じて怖がる子も出てきたので、どこそこに出没しただの、目撃されただのという話は避けていました。中には、相手が怖がるのを面白がってか、自分の話を真剣に聞いてもらえるのが嬉しくてか、どんどん話を盛って大袈裟に語る男子もいました。
さすがにやりすぎじゃないかと思った私は、実はこのあいだ、口裂け女が警察に逮捕されたんだよ、という話をしました。口裂け女の話が、これ以上大きくなるのを止めたかったのだと思います。
朝からそんな話をしていた矢先、その日の帰りの時間に、担任の先生が口裂け女の噂話について、そういう話をまことしやかに広めないように、という注意をしました。そして、クラス内で口裂け女の話をしていた子は誰ですかと問いただしました。
クラスのみんなが、口裂け女の話をしていた子に視線を向けます。自分からきまり悪そうに立ち上がる子が何人かいて、私もそのうちの一人として視線を向けられました。仕方なく立ち上がって、他の子どもたちと一緒に先生から注意されました。
私としては、これ以上噂話が広がらないようにと思って、逮捕されたという話をでっち上げたのですが、噂の拡散に加担したと思われたようです。本当は噂を止めたくてと言い訳したかったのですが、嘘をついたという罪悪感もあって、何も言わずに先生の小言を聞いていました。
それにしても、口裂け女の盛り上がり方は、今思い出しても異常なほどのブームでした。ガチャポンのカプセルで、口裂け女の口の形をしたゴムのおもちゃが売られていたくらいです。両端に輪ゴムがついていて、それを耳にかけると、大きく裂けた口を装着できるようになっているのです。私はオレンジ色のやつを持っていました。一度つけてみただけで、誰かに見せるでもなく、そのままおもちゃ箱にほったらかされていました。
ネットが普及した現在では、ああいう口コミで広がる噂話というのはなかなか耳にしなくなりました。思えば、今の息子氏はあの頃の私と同じ年。小学校の子どもたちのあいだで、独自の噂話とかが今でもあるんでしょうか。何かあれば聞いてみたいものです。
なぜだかふと思い出した、口裂け女の話でした。もう40年前の話です。
40年前!?そっちのが怖いわ。
ではまた!