先週から公開始まりました『GODZILLA 怪獣惑星』、まだ観に行ってませんので作品の感想は書けませんが、予告編を観て感じたことがあります。それは「『Peeping Life』の呪い」と呼ばれる現象で、僕が勝手に名付けたものです。
時は2008年、『Peeping Life』なるCGアニメーション作品が世に出ます。
アドリブコントみたいなものをCGアニメーションで表現したもので、3DCGにセルアニメ風のスキンを乗っけた、いわゆる「セルルック(セルライク)」という表現手法でキャラクターが造られています。3DCGの世界では「トゥーンレンダリング」や「トゥーンシェーディング」と呼ばれる技術で実現されています。
日本では2004年の『APPLESEED』で話題になった手法で、それまでの3DCG然とした陰影や質感ではなく、あえてセルアニメのようにベタっとした平面的な色や影をつけることで、3DCGとモーションキャプチャの滑らかな動きを、セルアニメ的な絵で実現できるという画期的な技術でした。(セルルックの歴史や技術的な説明については個人の記憶に基づく曖昧な記述であることをご了承ください)
この新しい技術をしょーもない(褒)アドリブコントに使った作品が『Peeping Life』です。
10年前には新しい技術だったセルルックも、今ではテレビアニメでも多用されるようになり、メカだけでなく人物などのキャラクターもすべてセルルックの3DCGで描く作品もたくさん出てきました。僕が観た中では、『シドニアの騎士』『亜人』などがあります。
両作品とも、CGアニメを手掛けているのはポリゴン・ピクチュアズという制作会社で、CGのメディア展開黎明期から活動している「老舗」と言える存在で、広告などでもたくさんのCGを手掛けているので、この会社の作品を観たことがない人はほとんどいないと言っても過言ではないでしょう。
『GODZILLA 怪獣惑星』も、このポリゴン・ピクチュアズが制作しています。
さて、じゃあ何が呪いなのかという話なんですが、セルルック黎明期に『Peeping Life』を観てしまった僕は、その後のセルルックCGアニメを観るにつけ、どんなにシリアスな作品で、どんなにカッコいいキャラクターが出てきても、全部この『Peeping Life』とかぶって見えてしまうということなんです。
特にひどかったのがテレビシリーズの『亜人』で、内容はすごくハードな話なんだけども、キャラクター同士が会話しているシーンなんか観ると「あれ……これPeeping Lifeなんじゃね?」と思えてしまうのです。会話の内容はすごくシリアスなのに、キャラクターの動きを観ていると、なんかすごくゆる~い会話が交わされているような錯覚を覚えてしまう。
そうなるともう本来のストーリーに集中できなくて、シリアスな世界に入り込めなくなってしまうんですよ。登場人物が、隠れ家の一室でソファに座って会話している。会話の内容は、殺すか殺されるかみたいな話なのに、キャラの動きがPeeping Lifeっぽく見えちゃうともうダメ。
3DCGとモーションキャプチャの組み合わせが、生身の人間の動きをアニメに変換することを可能にしたわけですが、中割りが滑らかすぎるというか丁寧すぎるというか、セルアニメみたいにコマを飛ばしてスピード感を出すみたいなことができない(やらない?)から、動きが均質になりがちだと思うんですよ。たぶんね。
だから『亜人』も『シドニアの騎士』も『Peeping Life』も、キャラの動きが同じように見える。演じているのは生身の人間ですから、極端な差は生まれないわけです。
そういうわけで『GODZILLA 怪獣惑星』を観に行きたいんだけども『Peeping Life』の呪いが怖くて躊躇している、という話でした。
ではまた!