心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

【映画感想文】ブレードランナー2049【ネタバレ含有】

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 やっとこさ、観てまいりました。平日昼間だというのにそこそこの客入り。客層はやはり中高年男性が中心。しかし僕の前の席では若いカップルが微妙にイチャイチャしながら観ていて、おまいら何しに来たんだと若干思いました。

 さてブレードランナー2049の話ですが、主人公のKはレプリカントでありながらブレードランナーとして活動しています。一人のレプリカントを始末した時、その住処の地中に埋まっていたレプリカントの骨が、かつてデッカードと駆け落ちしたレイチェルのものと判明。詳しく調べると、なんとレイチェルの死因は、難産の末に帝王切開したことにあると判明。レプリカントが妊娠・出産だとぅ?そんなことが起きたら人間とレプリカントの区別がなくなって大混乱が起きるぞ、すぐに子供を探して始末しろ、という命令を人間の上司から受けるK。

 レイチェルとデッカードの子供を探す過程で、もしかするとその子供というのはK自身なのでは?という可能性が示唆されます。そこでKはデッカードが潜伏すると思われる、廃墟となったラスベガスへ赴きます。そのラスベガスの描写がまたすごくて。全体的に赤いっていうか黄色っていうか、砂漠な感じで。画面の色がそれまでの寒々しいモノクロ感から一気に暖色系に変化します。そこに登場するのがすっかり年老いハリソン・フォード演じるデッカード

 ところで、30年前のブレードランナーで主演を務めたハリソン・フォードが再びデッカードとして出演することは大きく宣伝されていましたが、デッカードの同僚で、前作では胡散臭いやつと見せかけて、レプリカントのレイチェルとデッカードの駆け落ち(?)を見逃してくれた(あるいはわざと見逃した?)ガフ役のエドワード・ジェームズ・オルモスも、リアルに年老いたガフとして出演していました。かなりおじいさんになっていて、前作のフレディ・マーキュリーっぽさは欠片もありませんでした。

 前作のキャストといえば、デッカードと駆け落ちしたレイチェルも、当時のレイチェルそっくりに造られたレプリカントとして今作に登場しました。顔が出るまでちょっと間を持たせていて、最初は暗闇からシルエットだけ、次のカットで背後から、そしていよいよ顔が……という流れで、観ているこっちは「どうなってる?顔出すの?どうやって当時のレイチェルを再現した?CG?昔のフィルムの合成?そっくりさん?」などといろいろ考える時間がありました。

 実際のところ、前作と同じ顔の、若いままのレイチェルが登場してちょっとびっくり。これどうやったんだろう?と思って調べてみました。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 Yahoo!知恵袋もたまには役に立ちます。リンク先の英語のサイトを見ると、いやこりゃすげぇわ、となります。そっくりさんとCGと昔の映像と、かつてレイチェルを演じたショーン・ヤングが全部合わさって作り上げられたシーンだったんすね。これができるんなら、オードリー・ヘプバーンマリリン・モンローも最新の映画に登場させられるんじゃないですか。

 マリリン・モンローといえば、デッカードが隠遁していたラスベガスの廃れたカジノで、ホログラムのマリリン・モンローエルビス・プレスリーがステージに登場していました。ジュークボックスでは小さなフランク・シナトラが歌っていました。ああいうシーンにも、何か意味が隠されているんでしょうな。

 そのラスベガスで、デッカードを訪ねてきた主人公のKは追手の黒幕に襲われるわけですが、黒幕が連れ去ったのはKではなくデッカード。ここで「なぜ?」となります。それまでの話の流れで、デッカードとレイチェルの子供であるKを、繁殖可能なレプリカントを造り上げる鍵として黒幕が連れ戻しに来たんだろう、と観客は思うわけですが、実はそうじゃなかった、という展開が待っています。

 Kは、自分が「人間もどき」として造られたレプリカントではなく、奇跡的に「産み落とされた」存在だという確信に戸惑い、同時に歓喜を覚えます。人と同列の存在であること、自分には魂が宿っているのだ、という思いが、彼に「生きている実感」を与えます。

 しかし、彼の記憶も、彼がレイチェルとデッカードの子供であるという証拠も、実はねつ造された情報だとわかってしまう時が来ます。そこですんごい落ち込むんですけど、最終的にはデッカードを助けることで自らのアイデンティティを確立する、というようなエンディングを迎えます。

 このあたりのテーマは、原作者であるフィリップ・K・ディックの他の作品にも見られるもので、同じくディック原作の映画「トータル・リコール」でも、偽造された記憶と自己を、自らの行動によって真実たらしめる、みたいな展開があります。

 自分が何者であるかを決めるのは、出自でも肩書でも他人でもなく、自分自身なんだ、自分が何者かを自分で決めるからこそ、自分は自分たり得るのだ、というメッセージが込められているように思いました。 

トピック「ブレードランナー2049」 

 おまけとして、印象に残ったシーンをふたつ。

 ひとつは、レプリカントを製造している会社のトップであるウォレスっていう盲目の人がいるんですけど、こいつが生まれた(造られた?)ばかりの女性レプリカントを殺しちゃうシーンがあるんですよ。最初から手にメスを持ってて「あーこいつヤバいわ、ヤバいヤバい、ああーやめてー」と思ってると案の定ブスッとね。ウォレスは怖かったです。女性レプリカントめっちゃ可哀そう。

 もうひとつは、Kが一緒に暮らしていたホログラムのAI彼女。レプリカントを作ってるのと同じ会社の製品なんだけど、本当にKを愛してるみたいで、Kも彼女のことが好きで、しかも演じてる女優さんめっちゃ可愛い。自分はホログラムで実体がないからって、娼婦を雇って自分の映像を重ね合わせてKと触れ合おうとするの。健気だよね。

 だけどそういう愛情とかも全部作り物なんじゃないかって思わせるものがこの作品全体の底にあって、自分が感じているものが果たして自分が思うほどに真実なのかっていう疑問を投げかけてくるんですよ。で、まさにそういう感覚がフィリップ・K・ディックの作品のエッセンスじゃないかと思います。

 ということで、今回はここまで。またね!

P.S.

 ブログタイトルをちょこっと変えました。文系から理系になった気がします。今年はやけにSFづいているので、SF小説のタイトルっぽくしてみたんだよ。

 

 

 

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一方、おっさんの排尿事情。

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 NHKの『あさイチ』は、時々トンがった企画をぶち上げることで有名ですが、またやってくれたようです。ちなみに僕は一度も観たことがありません。

 ということで、今回は排尿関係の話です。男性は中高年になると、前立腺肥大に悩まされる人が増えるといいます。僕もその中のひとり。しかもかなり早い時期から排尿力の衰えを感じていて、30代前半ですでにはっきりとした自覚症状がありました。さらに、なんとなくおかしいと思い始めたのは20代後半。

 若い頃、性的なエネルギーのエッセンスを発射する際に、ギリギリまで我慢するという訓練を自主的に積んでいました。できるだけ行為を長引かせたいという思いから、そのような訓練をしていたのですが、どうもやりすぎたのか、やり方がまずかったのか、徐々に排尿のスピードが落ちていきました。管の根本のほうが狭くなった感じで、括約筋は緩めているのに勢いよく出てこないのです。

 まだ少年の頃は、我慢した尿を輩出するには、ふっと力を抜くだけで「ぶしゃーっ」と勢いよく出たものですが、中年になった今では管を締める筋肉の力を抜いて、さらに下っ腹に力を入れて膀胱に圧力をかけないとすんなり出てきません。しかも最後まで一気に出るのではなく、途中から勢いがなくなってくるので、締める筋肉に力を入れて、一旦絞り出してからまた緩める、という動作を何度か繰り返してようやく最後まで排尿できるという状態。

 さらに、この年になっても長期間経てば溜まるものは溜まるので、抜かずに放っておくとそれがまた尿道を圧迫し、排出の勢いがさらに弱くなります。当然、同じ管から出てくる性的エネルギーのエッセンスも発射の勢いが弱くなり、最後まで絞り出せていない感覚が残ります。残尿感ならぬ残〇〇感。年を重ねるごとに肥大化が進み、排尿困難だとか前立腺ガンだとかになったら嫌だな~と思っています。

 そんな折、何かいい薬はないかとGoogle先生に問い合わせたところ、ノコギリヤシエキスがいいらしい、という情報を得ました。テレビでは、中高年男性の排尿の悩みに応えるという飲み薬などが宣伝されていますが、僕が試した限りではあまり楽になったという実感はありませんでした。そこで藁にも縋る思いで手にしたのがノコギリヤシエキスのサプリメント

 これが意外と効果ありまして、飲んだ翌日の朝には効果を実感できるという即効性もあり、ここ数カ月はお世話になっています。ただ、若い頃のようにぶしゃーっと出るほどの勢いが戻るわけではなく、ちょっと出やすくなったな、という感じがする程度です。それでも飲まない時よりは明らかに前立腺付近の尿道の感触が違うので、少なくとも僕には効果があるのかなと思っています。

 これからさらに年を取って、肥大化が進んだとしたら、最終的には手術しかないのかも、と思いますが、実際に手術を経験した親戚のおじさんの話では、思ったほど改善されなかったというので、今のところあまり期待していません。しかし多くの男性が経験している前立腺肥大なので、これから技術が進歩して、安全で効果の高い手術ができるようになればいいなと思います。それまではノコギリヤシのお世話になるしかありません。

 ではまた!

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【いまさらシリーズ】鉄腕アトムの髪はミッキーの耳

 昨日の記事で、創作においてはオリジナルが必ずしも正義ではない、というような話(たぶん)を書きました。

gokumatrix.hateblo.jp

 今日もまた、【いまさらシリーズ】と題して、鉄腕アトムミッキーマウスの類似について書きます。ミッキーマウスの耳に関しては、2次元の耳を3次元でどのように実現するか、という内容で記事を3年前に書いています。

gokumatrix.hateblo.jp

 つい先日も、子供が観ていたミッキーマウスクラブハウスのミッキーを見て、この耳の話を思い出し、2次元から3次元への展開(3DCGやフィギュアなどの立体化)で苦労しそうな髪型もたくさんあるよな、と思いました。あしたのジョーしかり、ドラえもんスネ夫しかり、鉄腕アトムしかり……ミッキーマウスには正面顔があるけど、日本の特徴的な髪形を持つキャラクターで、正面顔があるものはあまり見かけません。たいてい横顔、というか斜め横顔ありきでデザインされたマンガ由来の髪型で、3次元に起こすという前提がないからでしょう。

 そういえば、鉄腕アトムは間違いなくフィギュアなどで立体化されてるはずだけど、どうなってるんだろう、と思って画像検索すると、マンガと同じ髪型をうまいこと立体化しています。斜め上と後ろ向きに飛び出した角のような髪。でも、見る角度によってはアトムっぽくない髪型に見えるよなぁ。仕方ないことだけど。ん?まてよ……この”ツノ”の配置どこかで……ミッキーや!ミッキーマウスの耳や!

 僕がこの人生で鉄腕アトムミッキーマウスを知ってから、一体何年経っているのでしょう。初めて気がつきました。ネットで調べると、出るわ出るわ、アトムのデザインはミッキーが元ネタだ!という記事がこれでもかと出てきます。やっぱりみんな知ってたかー!なぜに教えてくれなんだ!

 そもそも、そんなことを気にする人はたぶん限られているんでしょうね。自分だって、今の今まで気づかなかったんだから。しかし考えてみれば、手塚治虫はディズニーに憧れてテレビアニメを作った人なんだから、ディズニーに似たキャラクターを生み出したとしても何の不思議もありません。リボンの騎士もかなりディズニー的な世界ですよね。

 『漫画の神様』と呼ばれる手塚治虫でも、やはり人間ですから、全くの無から何かを生み出したわけではないということですね。しかしそうは言っても神様と称されるほどのクリエイターですから、無からではないにしろ、彼が生み出したものが、後の日本のマンガやアニメに大きく貢献していることに変わりはありません。

 いい感じにまとまりましたか?ではまた!

 

 

 

【いまさらシリーズ】『仮面ライダーウィザード』と『まどか☆マギカ』の類似点から、創作とは何かということに思いを馳せる。

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 子供が4歳の頃から仮面ライダーにハマりだして、今年で3年目。

 最初に見せた仮面ライダーは『仮面ライダー鎧武』でしたが、その頃はまだ戦隊ヒーローの『トッキュウジャー』のほうが好きでした。『仮面ライダードライブ』の頃も、まだ『ニンニンジャー』のおもちゃを欲しがっていました。風向きが変わったのは『仮面ライダーゴースト』から。この時期にスーパー戦隊を卒業し、仮面ライダーシリーズに関心が移行します。

 『仮面ライダーエグゼイド』から始まった、劇場版『平成ジェネレーションズ』には、過去4代前までシリーズを遡って”レジェンドライダー”たちが登場します。この作品に登場するレジェンドライダーの中で、子供ではなく嫁さんが興味を持ったのが『仮面ライダーウィザード』でした。主役のイケメン俳優がハートに刺さったのか、DVDを借りてきて子供と一緒に観始めました。ついでに僕も子供が寝てから晩酌のつまみに観ていたのですが、そこでふと気づいたことがあります。

 (この設定、まどか☆マギカに似てるなぁ)

 そう思ってネットで検索してみると、やはり放送当時から同じ話は持ち上がっていたようで、パクリだのなんだのと言われることもあったようです。両作品の類似点を挙げると以下の通り。

 ・メインキャラは魔法使い

 ・絶望によって心が壊れると何かを生み出す

 ・絶望から生み出されたものと主人公が戦う

 ・魔法使いへの転身に導く者が実は純粋な味方ではなく裏がある

 僕が気づいたのはこんなところでしょうか。メインキャラが魔法使いの作品はいくらでもあるので、重要な類似点は他の3つ、『絶望』というキーワードと、その絶望から何かが生み出されるという展開、そして味方だと思っていたキャラがそうでもなかったというオチ。あと、そいつが"白い"ところ。

 商業作品の宿命として、作品の出来不出来は売り上げが決めると言っても過言ではありません。その売り上げをどう狙うかで、道は大きく二通りに分かれると思います。ひとつはこれまでにない斬新さで、一か八かの大穴を狙う道。もうひとつは現在売れている、または売れそうなものを取り入れて堅実に当たりを狙う道。

 スーパー戦隊仮面ライダーも作品によってこの二通りの分類ができるのではないでしょうか。そういう観点から見ると、『仮面ライダーウィザード』は、『魔法少女まどか☆マギカ』のヒットを参考に制作されたと考えるのが妥当でしょう。しかし僕はそれをパクリだなんだと非難するのは馬鹿げていると思います。パクリだろうと二番煎じだろうと、商業作品という点では、売り上げこそ正義なのですから。

 それに、創作においてこれまでにない全く新しい作品を生み出すというのは、営利を伴わない芸術家ならともかく、それを種に飯を食おうとする者にしてみれば自殺行為です。これまでにない全く新しいものが、いきなり世間一般に受け入れられ、ヒット作になることなんてあり得ませんから。すべての創作は何かを継承した上に成り立つ、ということを忘れて、オリジナル至上主義とでも言うようなものを振りかざすのは、的外れな”潔癖症”としか思えません。

 売れる作品は、売れるだけの根拠を持った面白い作品です。それを取り入れた作品も、取り入れ方を間違えなければ面白い作品になるはずです。そうやって面白いものが積み重なって、組み合わさって、奇跡のように噛み合った時、また飛びぬけた面白さが生まれる。面白いものは、必ずしも新しいもの、オリジナルなものである必要はありません。少なくとも僕は、斬新でわけのわからない作品より、元ネタがわかっても面白い作品が観たいと思います。

 今回はここまで。ではまた!

 

小説 仮面ライダーウィザード (講談社キャラクター文庫)
 

 

 

 

キャッチャー・イン・ザ・ふとん

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 2週連続の台風が過ぎたあたりから、朝晩かなり涼しく……というより、もう寒いレベルになってきました。先週まで、薄い毛布でしのいでいましたが、朝の寒さに耐えきれず掛け布団を出しました。夜寝るときはそれほど寒くないのですが、やはり朝にはすっかり冷え込んでいるので、寒さで縮こまった状態で目が覚めるのです。

 子供は体温が高いせいか、寝るときになかなかパジャマを着てくれません。お風呂で温まっているのもあり、暑がって下着だけで寝ようとします。しかし朝は寒がって布団から出るのを渋るくらいなので、下手をすれば風邪を引いてしまいます。実際、ここ2~3日は鼻を詰まらせてズルズルいってます。

 こちらはなんとか暖かいパジャマを着せようと説得を試みるのですが、今を生きる子供に明日の朝の寒さなど関係ありません。この季節は毎年こんなことを繰り返しているような気がします。

 先日の夜、例によって息子にパジャマを着せようとすると、布団の上をゴロゴロ転がりながら、

 「もしも捕まえられたらパジャマを着させてあげる!」

 と、謎の上から目線で言われました。お花畑や砂浜で追いかけっこするカップルの女の子のほうが「あははは、捕まえてごらんなさい!」とか言う、ベタなあるあるシーンが脳裏をよぎりました。

 捕まえられたら……って、布団の上でゴロゴロ往復しとるだけやないか。

 しかし、ここでいきなり捕まえてしまえばヘソを曲げるのは目に見えているので、捕まえるぞ~というフリをして場を盛り上げ、嫁さんを交えてひとしきりキャッキャウフフしてから確保。無事にパジャマを着せることができました。

 息子よ、お前めんどくさいけど面白いな。

 それではまた!

 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

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