心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

小池一夫先生の訃報に接して

人生の結論 (朝日新書)

「三つの心で呼ぶのなら 正義と愛と友情と」

 昨日のことである。フォローしている小池一夫先生の公式ツイッターから、訃報のツイートが流れてきた。

 最初は、悪い冗談かと思った。公式アカウントでそんな冗談はあり得ないのに、頭が受け付けなかった。

 かれこれ30年ほど昔、NHKの通信教育講座で、先生の「コミック原作」の講座を受講していた。「漫画原作」ではなく「コミック原作」である。その講座は、結局途中でやめてしまったが、送られてきたテキストは何度も読み返した。そんな、通信講座をちょっとかじっただけの身ではあるが、密かに「小池一夫先生の弟子のひとり」と勝手に思っていた。

 10代後半から、21歳あたりまで、およそ5年の間に、小池一夫先生が原作を手掛けた漫画を読み漁った。きっかけは、当時連載中だった「クライング・フリーマン」だったと思う。そこから、「傷追い人」「I・餓男」「赤い鳩」「OFFERED」(池上遼一・作画)、「子連れ狼」「半蔵の門」「首斬り朝」「春がきた」「孫悟空」(小島剛夕・作画)、「ダミー・オスカー」「魔物語」「ブラザーズ」「オークション・ハウス」(叶精作・作画)、「デュエット」「マッド★ブル34」(井上紀良・作画)、あとWikipediaには載っていないが、神崎将臣作画の「萬川集海」も印象に残っている。読んだけど忘れている作品もあるかもしれない。

 小池先生の作品からは、雑学的な知識のみならず、人間の泥臭さのようなものを学んだ。それまで少年漫画ばかり読んできた私は、彼の作品で大人の世界を知り、そのことが私の価値観や世界観、人格形成に大きな影響を与えた。

 こうして振り返ってみても、どれだけバラエティに富んだ作品、どれだけ多くのキャラクターを生み出してきたのかと、そのあまりの膨大さに驚くばかりだ。手塚治虫が漫画の神様なら、彼は劇画の神様だろう。

 正直、悲しい、という感情はない。ただただ、衝撃がある。何か、ひとつの時代が終わったという気がして、私の心に大きな空白ができたような気がする。私という人格を形成している作品群を創り出した神が、見えない世界へ旅立ってしまった。何か、言い表しがたい寂寞を感じる。

 どれだけ偉大な功績を残しても、どれだけ多くの人に愛されても、人はいずれ死ぬ。アインシュタインも、美空ひばりも、手塚治虫も、プレスリーも亡くなった。偉大なる彼の人たちの死が、凡人たる私に突きつけるものは何だろう。

 小池一夫先生の訃報に、追悼の意よりは、感謝の意を捧げたい。

 ありがとうございました。

〈ANIMEX1300 Song Collection シリーズ〉(5)ぼくらのマジンガーZ

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