「花は爛漫 咲き乱れ のどかなごやか 常春の」
東海ラジオで昨年10月から放送されていた『なごやか寄席』が終了した。
毎週楽しみにしていたので、番組改編を乗り越えられなかったのは残念だ。今はYouTubeでもCDでも、聴きたいときに聴ける時代だが、ラジオから流れてくるというのは、また違った趣がある。
といっても、私はラジコで録音してiPhoneで聴いていたので、趣もへったくれもないのだけど。
最終回は、五代目柳家小さんの「猫久(ねこきゅう)」と、五代目三遊亭円楽の「花見の仇討」だった。最終回にふさわしい名演を聴けたと思う。
小さんの「猫久」を聴いていると、突然「おしりのかず」という台詞が聞こえてきた。これは題名になっている「猫久」というあだ名の町人の、向かいの長屋に住んでいる男の女房の台詞だ。
それまでの話の流れから、唐突に「おしりのかず」なんていう言葉が出てきたので「おや?」と思って聴いていると、どうも空耳のようだ。
女房の言葉は続けてこうだ。
「おしりのかず何だと思ってんだよ。いわしのぬただよ、味噌はあたしがあたっといたよ。いわし拵えとくれ」
いわしのぬた、とは魚のイワシを酢でしめて、味噌などで味をつけた料理だ。男の女房は、男にイワシの下拵えをしておけと言うのだ。男はそのまま家を飛び出して、床屋へ向かいながら、独り言で女房の愚痴をこぼす。
このやり取りから察するに、「おしりのかず」とは「お昼のおかず」のことらしい。
小さんの江戸訛りで「おひる」が「おしる」になったのを「おしり」と聞き間違えたのだ。「かず」は「おかず」から「お」を取ったものだろう。そんな言い方があるとは知らなかったが、「お」が丁寧語の接頭辞であることを考えれば、なくはないか。
普段は「おかず」でひとつの言葉として当たり前に使っているので、おかずの「お」が接頭辞だということなど忘れてしまっている。むしろ「お」を取ってしまうと、今回のように意味が分からなくなる。そういう、接頭辞が当たり前についていて、それがなければ通じないような言葉は他にもありそうだ。面倒だから探さないけど。
古典落語には、古い言葉がよく出てくるから、こういうところで何かと勉強になる。
番組が終わってしまうので、販売されている音源で楽しみたいと思ったが、CDでしかリリースされていない。こういう作品がダウンロード配信されたら買おうと思うのだけど、落語ファンは高齢者がメインだから、ダウンロード配信などでは売れないのだろう。若い層にもファンはいるはずだから、ぜひダウンロード配信も検討して欲しいところだ。
ということで、今日の話はここまで。
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