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【映画鑑賞記】空海−KU-KAI− 美しき王妃の謎(吹替え版)【ネタバレ少しあるYO】

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 原作は夢枕獏さんの『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』です。最近の記事にも書いたとおり、彼の作品は中学生の頃から好きで、10代~20代は継続的に読んでいました。ここ10年ほどはご無沙汰していて、つい最近、図書館で『大江戸釣客伝』を少し読んだ程度です。

 今回は原作を読まず、先に映画を観ました。原作のほうはこれから読む予定で、すでに単行本を全巻購入済みです。原作は単行本4巻にわたる長編で、映画も2時間半と長丁場でした。途中からお尻が痛くなって、姿勢を少しずつ変えながら最後まで乗り切りました。

 しかし2時間半の大作でも、原作で描かれたものを全て詰め込むには無理があったんだな、ということを、映画を観ながら思いました。おそらくこの映画は、原作を読んで、基礎知識を持ったうえで観たほうが、物語に入り込みやすいのではないかと思います。

 正直なところ、映画の導入から半分くらいまでは、作品世界に入り込めませんでした。まず、主人公である空海や、友人の白楽天(後の白居易)のキャラがうまく立っていないことが大きいです。2人の関係は『陰陽師』における安倍晴明源博雅とダブるものがありますが、メインキャラであるにも関わらず、観ている者を引き込むためのエピソード、いわゆる「つかみ」の描写が弱いと感じました。

 空海も白楽天も、キャラがぼんやりした状態のままどんどん話が進んでいってしまいます。さらに、中国人俳優の独特な演技やせりふ回しとか、あとはなんと言えばいいのか……文化の違い?ちょっと私の文章力では表現しづらいんですが、物語にすんなり入り込めないものを感じました。それも、単に私の知識不足が原因なのかもしれませんが。

 中盤以降、玄宗皇帝と楊貴妃の間に起きた30年前の出来事と、空海たちが活動している現在のシーンが目まぐるしく入れ替わりながら、皇帝やその周辺につきまとう呪いの謎を紐解く過程で、ようやく物語の筋道が見えてきます。

 国家の動乱に巻き込まれる玄宗皇帝と楊貴妃の愛、楊貴妃に魅入られた阿部寛……いや阿倍仲麻呂、幻術士の兄弟、そして皇帝と楊貴妃の愛を描こうともがく白楽天。過去と現在、愛と憎悪が複雑に絡み合う謎に、空海が迫ります。

 物語のラストで明かされる、悲しくも美しい真実に、あなたはきっと涙する……

 かもしれない。

 少なくとも、セットにすごいお金がかかってるなぁというのは観てて思いました。CGも豪華だけど、CGじゃないセットの豪華さもハンパないです。いや正直なところ、どこまでがセットでどこからがCGなのかわかりませんでした。

 ということで、玄宗皇帝と楊貴妃の時代の歴史に詳しい人以外は、原作を読むか何かして、基礎知識を持って鑑賞に臨まれることをお勧めします。きっと私より深く作品を楽しめることでしょう。

 私はもう映画を観てしまったので、ひとまず映画のことを忘れてから原作を読みたいと思います。

 ではまた!