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【ネタバレ】西遊記~はじまりのはじまり~ 観てきました【バレバレ】

 周星馳監督の例のアレを観てきました。吹き替え版です。

 この作品を料理に例えるなら、やはり中華。しかもかなり脂っこくて味が濃い。お腹にもたれる。しかしその奥に漢方のフレーバーがそこはかとなく漂っていて、ややもすれば「あれ?これひょっとして体にいいんじゃね?」という錯覚すら起こさせる始末。そんな映画です。

 まずは気になる点を挙げていきましょう。

 ひとつは、あっちの映画にありがちな笑いのパターンが醸し出す”アク”が、少し喉にひっかかるように感じたこと。これはもう笑いの文化の違いなのでどうしようもないことだし、ジャッキー・チェンのカンフー時代劇の頃から見慣れてはいるのだけど、あえて言っておきます。

 もうひとつは、意図的にやっているのかもしれないけれど、CG、特に動物のそれがチープに見えたこと。虎とかイノシシとか出てくるんですけど、なんか生き物としてのリアル感に欠ける。たぶん中国とかで伝統的に描かれる絵の感じを出そうとして、ああなっているのだろうと解釈しています。

 周星馳監督の作品にしては、アクションよりストーリーに重点を置いて作られている印象です。もちろんアクションも派手ではあるけど、それよりも映画全体に流れる「人間の業」みたいなテーマが印象に残りました。苦しみや悲しみを乗り越えて悟りに至る三蔵の姿や、彼をとりまく登場人物たちの人間臭さが、アクションや伝奇だけでは終わらない壮大なテーマ性をこの映画に与えているように思います。

 吹き替えに関しては、アニメ好きにはご褒美とも言えるキャスティングで楽しませてくれます。山寺宏一茶風林神谷浩史羽佐間道夫野沢雅子、そして田中真弓野沢雅子田中真弓ドラゴンボールコンビは、え?というくらいのチョイ役で登場。あと羽佐間道夫さんは一体いくつなんだ?という疑問が改めて湧いてきましたので調べてみたら、1933年生まれの81歳。それであの演技。声優さんは本当に年を取りませんね。声優さんというか、声優さんの声がね。野沢さんだってもう80近いでしょ。それでまだ孫悟空の声が出るんだからすごいよね。

 孫悟空といえば、この映画のチラシに鳥山明先生が絶賛コメントを書いてます。そもそもこの映画はドラゴンボールにインスパイアされて作られたものらしいです。インスパイアっていうか完全にドラゴンボールだろっていうシーンもあり、そこは笑えますね。孫悟空が大猿になったり、玄奘の恋人がクリリンみたいに粉々に爆破されたり。悲しみの末に悟りを開いた玄奘スーパーサイヤ人みたいに光って無敵化したりとかね。

 その他印象に残ったのは、孫悟空が最初禿げた老人の姿で出てくるんですが、その悟空が女ハンターに踊りを教えるシーンがあるんですよ。そこがなんか全体的にアドリブっぽくて、面白かった。女優さんが本気で笑ってるっぽかった。それと、女ハンターの手下で、ジャッキー・チェンのカンフー時代劇に南拳の使い手として出てた俳優さんがいて、名前知らないんだけどこの人もキャリア長いな~と思いました。たしかカンフーハッスルにも出てた。

 最後、三蔵法師孫悟空猪八戒沙悟浄の4人がこれから天竺へ行くよってところで「Gメン’75」のテーマが流れたのは笑いました。40オーバーでないとわからないよねたぶん。隣に座ったおじさんも笑ってました。あと、エンドロールで「柔道一直線」の文字が見えたので、たぶんどこかで曲が使われてたんだろうなと思いますが、僕は世代じゃないのでわかりませんでした。対象年齢は50オーバーだよね。

 いろいろチンタラ書いてきましたが、まだ観てない人がこれ読んでから観ても全然楽しめる思います。ただ、この作品は面白いだけじゃなく、心にズシリとくるものがあるので、そこらへんは覚悟して観たほうがいいですね。