心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

WASIMOの絶妙な不謹慎感

 NHKEテレ「わしも -WASIMO-」 というアニメが放送されてました。作・宮藤官九郎、絵・安斎肇の児童向け絵本が原作です。

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 あのクドカンと、あの安斎さんが組んだ児童書が原作ということで、放送前から気にしてはいましたが、いつの間にか放送が終わってたんで、Eテレお得意のまとめ放送で初めて観ました。それもまとめの前半のみ。後半も録画しなきゃと思ってたのに、忘れちゃったんですねぇ。

 もとは自分が観るために録画したものですが、息子氏と一緒に観てたら彼のほうがすっかりハマってしまい、ほぼ毎日「わしも」を観ています。

 毎日観てるうちに、やっぱりクドカンて売れてるだけあってすごいんだなと思ったので、どこらへんがすごいと思ったのかちょっと整理してみます。
 まず、いきなりおばあちゃんが死ぬところから話が始まります。おばあちゃん子だったひよりちゃんは一週間くらい泣き続けるほどおばあちゃんが大好きでした。それを見かねたエンジニアのお父さんが、おばあちゃん型ロボット「wasimo」を作ります。
 名前の通り、H〇NDAの「アシモ」がモデルです。世界に先駆けて本格的二足歩行を実現し、先ごろ来日したオバマ大統領を接待した、あの「ASIMO」です。その、日本が世界に誇る二足歩行が「なんかお年寄りみたい」っていう、言ってはいけない的なことを暗に言っちゃってます。
 「わしも」の外見は、アシモを2.5頭身くらいにして、頭におばあちゃんの皮をかぶせた感じ。そして口には、亡きおばあちゃんの遺品である入れ歯が装着されてます。そのロボットを見たひよりちゃんは「わしも」に飛びついて大喜びします。いきなりそこまで懐く?ロボだぜ?死んだおばあちゃんとは似ても似つかないぜ?私はここで若干うすら寒いものを感じました。
 「わしも」はロボットで、動力源は電気です。内臓バッテリーに充電して活動するわけですが、充電器はなんと仏壇型。老人型ロボットが仏壇型充電器にすっぽり収まって充電する。なんとシュールな絵面でしょうか。信仰に厚い仏教徒の人が見たら、ちょっと引くか、下手したら怒り出すんじゃないかと余計な心配もしたくなります。
 あるエピソードに登場した警察官が「わしも」に聞きます。「ロボットなんだから、何か便利な道具とかないの?」いやそれロボット全般じゃなくて、ドラ〇もん限定だから。あげく「どこでも好きなとこ行ける、便利なドア持ってないのかい?」もう完全にド〇えもん扱いだよね?
 警察官以外にも、キャラによって「わしも」の扱いが違ってきます。ひよりちゃんのお母さんなんか「わしも」に掃除させたり、お使いを頼んだり、完全にお手伝いさん扱い。掃除の時に誤って大事な花瓶を割ってしまった「わしも」を、一昼夜説教しまくります。まるで姑いびりのようです。
 そんな感じで、日常をコミカルに描いているようで、実はチクリチクリと皮肉めいたものを含んだ作品なのではないかと思います。「不謹慎」というのとはちょっと違うかもしれませんが、単にのほほんとした児童向けの作品でないことは確かでしょう。
 ところで「わしも」の主題歌は、クドカンが作詞もしています。この歌の最後のフレーズは「最新型のおばあちゃん」。なんでしょうかこの矛盾に満ち満ちた楽しげなフレーズは。おばあちゃんなのに最新型です。ロボットだから当然といえば当然なんですが、よくこんなフレーズを思いついたもんだと感心しきり。

 そういえば私が子どもの頃、これまたNHKの番組「みんなのうた」で『コンピュータおばあちゃん』という歌が流れていました。最近でも、懐かしの歌的な番組で紹介されることがある人気の歌です。こっちは本当にコンピュータを搭載しているわけではなく、当時は未来を感じさせる言葉だった「コンピュータ」のように、新しい話題に精通した、若々しく元気なおばあちゃん像を歌った作品、という印象があります。つまりこっちのおばあちゃんも「最新型」と呼べそうなおばあちゃんだったんですね。

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WASIMO

WASIMO

 
WASIMO 2

WASIMO 2