心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

【映画鑑賞記】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』【時はまさに世紀末】

TOUGH BOY

Welcome to this crazy time

このフザケた時代へようこそ

 BSで放送されていたのを録画して観た。2015年日本公開の『マッドマックス』シリーズ最新作。っていうか前作は1985年の『マッドマックス サンダードーム』だから、30年経ってる。

 中学生の時、今はもうなくなった近所の映画館へ、親父と2人で観に行った記憶がある。あの頃の親父はなぜか、時々映画を観に連れて行ってくれた。なんでだろ。

 マックスはもうメル・ギブソンじゃなかった。そりゃそうか。63歳であんなハードな役は無理だよね。代わりにトム・ハーディという、ちょっと丸くて野暮ったい顔立ちの俳優さんが演じている。若いころのメル・ギブソンみたいな、シュッとしたイケメンではないが、それはそれで味のあるマックスになったと思う。

 作品を観た感じとしては、もう頭のてっぺんからつま先まで『マッドマックス』といったところ。砂漠、暴力、絶望の三拍子そろってる。

 敵は、バットマンの宿敵・ジョーカーみたいなおっさん。なんかわけのわからない透明な鎧を着てた。たぶん、放射能の影響か何かで、皮膚病になってたのかもしれない。鎧を着る前に、体にできたイボみたいなものに、子どもが天花粉(?)を吹き付けてたから。今の若い人に「天花粉」て通じるのかな。ベビーパウダーって言えばわかる?

 そのジョーカーみたいなおっさん、本当はイモータン・ジョーっていう名前なんだけど、そいつが水源のある砦を牛耳っていて、弱い人たちを支配している。あと頭の弱い筋肉マンも従えている。それから、生まれつき寿命が短い若者たちを洗脳して、パシリに使ったりしている。若くて綺麗な女を独占して自分の子どもを産ませたり。人間の女から、牛みたいに母乳を搾乳してたり。なかなかグロテスクな世界を構築している。

 マックスは相変わらず砂漠をさまよっていて、その途中でイモータン・ジョーの信奉者である若者たち、ウォーボーイズの一団につかまり、車も奪われる。マックスって前回も車取られてたよな。

 イモータン・ジョーの配下で、彼の信頼も厚い女隊長・フュリオサは、別の集落から子どもの頃にさらわれてきた人で、イモータン・ジョーの「子産み女」たちを連れて砦を脱出する。そこへマックスが合流し、一緒にフュリオサの故郷である緑の地を目指す、という展開。

 ところで、このフュリオサを演じているのは、バラエティに富んだ役作りで知られるシャーリーズ・セロン。顔は知ってるんだけど、名前が思い出せなくて、作品を観ている間ずっとひっかかってた。この人の出演作で印象に残っているのは『モンスター』と『イーオン・フラックス』。『モンスター』は途中で観るのが辛くなって断念したけど。

 さて、マックスは放射能による病気に罹っていない健康体なので「ハイオク血液」と呼ばれて、ウォーボーイのひとり、ニュークスの「輸血袋」として車の前に縛り付けられ、鎖骨のあたりから輸血管を刺されてニュークスに輸血させられる。でもそのおかげで、フュリオサたちと合流して砦を脱出する機会を得る。

 ニュークスは、いろいろあってマックスと共にフュリオサたちに協力することになり、緑の地を目指すことになる。イモータン・ジョーの軍団に追われて、死にそうになったり、他の集団が治める土地を通過するために取引したり、だましたり、また死にそうになったり。もうとにかく死にそうなことばっかり。

 核戦争後に文明が崩壊して、人間社会が原始時代に戻ったような世界で、血と砂とガソリンにまみれ、ただ滅びるのを待ちながら生きるしかない人々。最初にこの世界を構築した『マッドマックス2』が公開された時代は、東西冷戦の末期。ひとつ間違えば世界は核の炎に包まれるという懸念は、そこそこ現実味のある時代でもあった。

 『サンダードーム』を観た頃、世紀末はまだ未来のことだったけど、いつの間にかそれも通り過ぎて、21世紀はもう20年経とうとしている。あんだけ世紀末世紀末と騒いでたのに、いつの間にかふんわり通り過ぎてしまった。

 願わくば、世界が少しずつでも平和になって、マッドマックスみたいな時代が来ませんように、と思うのであった。

 ということで、本日はこれにてお粗末。