名札で名字はわかるけれど下の名前は知らない
君はレジ子スター
たまに行くスーパーでのこと。
買い物を済ませて、レジに向かう。混雑する時間帯ではなかったので、5台あるレジのうち、2台しか人がいなかった。1台は、背の高いひょろりとしたお兄ちゃん。もう1台は、そこそこ可愛い女子が立っていた。
女子、といっても30代前半くらいか。それでも私から見れば十分に女子である。個人的に、最も旬な年ごろの女性だ。
色白で、ちょっとふくよか。身長は160cmに少し届かないくらいか。体重は50㎏台半ばといったところ。髪は肩甲骨あたりまで伸びていて、ダークブラウンに染めている。喉元を横切る2本のシワが、なんともいえない妙味を醸し出している。
私の前に、アジア系外国人の客がいて、小銭を出すのに手間取っていた。若い男性2人。技能実習生かな。
彼らが無事に小銭を出し終え、会計を済ませたので、次は私の番である。買い物カゴに半分くらいの量で、細かく計算しているわけではないが、ざっくり2千円くらいになるだろうか。
ひとつずつ、商品のバーコードをスキャンしては、会計済みのカゴに入れていく彼女。腕も白い。左手の薬指にはエンゲージリングがはめられている。指が短くて可愛らしい。子どもはいるのだろうか。くたびれた店でレジ打ちの仕事をしているが、彼女自身にくたびれた様子はない。かといって、幸せオーラで輝いている感じでもない。平凡で退屈な日常を送っているのだろうな、と勝手に予想してみる。
すべての商品をレジに通して、いざ会計である。
「5680円になります」
……え?
「マジで?」思わず声に出てしまった。
いやいやいや、それはないでしょう。
「5680円になります」
事務的な声で彼女が繰り返す。なにその自信ありげな声。
えーっと……なんて言えばいいのかな。レジの液晶画面を見ると、確かに5680円という金額が表示されているね。商品点数は48点だ。
は?48点?
いやいやいや、カゴにはどう見ても20点に満たない量の商品しか入ってませんけど?
明らかに間違っているよ。どう言えばいいのか、ほんの数瞬、固まっていると、
「あっ、すいません」
と彼女が言い、何かのキーを押した。すると、商品点数と金額が変わり、13点で1860円になった。
「1860円になります、すいません」
ほら、やっぱりね。だいたいの予想と合ってた。
おそらく、前にいた客の購入金額と合算されてしまったのだろう。レジを打つ仕事はしたことがないので、何をどう間違えばそういうミスが起こるのかわからないが、たぶんそういうことだ。
ホッとして本来の金額を支払う。
「すみませんでした、ありがとうございました」
半笑いで謝る彼女。え、そこ笑うとこ?
そりゃまぁ、人間誰しも間違いを犯すことはあるよね。こっちも別にそんな腹を立てるほどのことでもないと思ってるよ。だけど、そこで笑っちゃう?2回も間違った金額を宣言しておいて?倍以上の金額を請求しておいて?笑える?
こっちもつられて苦笑いで済ませたけど、内心ちょっとムッとしちゃったな。
地元にいくつか店舗を展開している、小規模なスーパーだから、店員の教育もそんなもんなのかな、と思った。
これが大手の店だったら、店員さんはもうちょっと真剣だ。会計の金額を間違えるなんてのは、レジの仕事でいちばんやっちゃいけないミスのはず。そのミスを犯して半笑いで謝れるということは、それだけユルい職場なのだろう。
タチの悪い客なら、店長を呼べとか言われて、とことん詰められることだってある。実際、そうやって泣かされている人を見たことがある。
私には女性を泣かせて喜ぶ趣味はないので、そこまでコトを荒立てるような真似はしない。
しかし、この程度のことでムッとしてしまう自分の心の狭さに、少し嫌気がさす。イヤだねぇ、これだから貧乏人は。
ということで、本日はこれにてお粗末。
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