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【映画鑑賞記】地下室のメロディー(1963年仏)【普通にネタバレ】

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風通しの悪い 地下室の匂い
陽当たりの悪い 胸の中

 去年の秋にBSで録画したのをようやく観た。

 1963年のフランス映画で、アラン・ドロンジャン・ギャバンという、映画にそれほど詳しくない私でも名前を知っている、名優2人が共演している。それだけでなんかもう名作っぽい。モノクロ画面が、往年の名画といった雰囲気を醸し出す。

 カラー映画は戦前から作られていたはずなので、これはわざとモノクロにしたのか、予算の関係でモノクロなのか、あるいは当時のフランスの技術水準の問題なのか、大人の事情なのか。どうなんだろう。

 最初に登場するのは、刑期を終えて出所してきた初老の男。元ギャングのシャルルだ。恰幅のいいジャン・ギャバンが演じている。彼の出所を待っていた妻は、彼が逮捕される前に作った隠し金で、小さなホテルを営みつつ平和に暮らしたいという夢を語るが、夫のシャルルは人生最後の賭けで、もうひと仕事デカい山を当てて優雅な余生を暮らすという。そのために、カジノの売上金を強奪する計画を立てる。

 この元ギャングの夫と、出所してくる夫を何年も待っていた妻のやりとり。冒頭に置かれたこのシーンで、人の幸福って何だろう?という問いかけがあるような気がする。

 次に登場するのが、いい年こいて親のスネをかじっているチンピラのフランシス。彼を演じるのがアラン・ドロン。母親から金をせびり、義兄からも金を借り、かなり仕上がったクズっぷりを見せる。

 シャルルとフランシスは、刑務所で知り合った縁で、カジノの売上金強奪計画で手を組むことになる。フランシスの義兄も、車の整備士をしている真面目な青年だけど、貧乏暮らしのため、勢いで巻き込まれる。

 フランシスは、シャルルの指示で、金持ちのボンボンとしてリゾート地のホテルに滞在し、カジノのショーガールと仲良くなって、舞台裏に出入りするようになる。これが、厳重な警備をかいくぐって金庫へ辿り着くための布石。

 舞台裏から、建物の屋上に上がって、換気口からダクトを通って、地下室の金庫へ入るエレベーターの昇降路に侵入し、カゴの天井から地下室へ出る、という寸法。まるでルパン三世みたい。たぶんアニメのルパンも、後年の犯罪映画も、この作品からヒントを得ているはずだ。

 舞台裏に潜んで、誰もいなくなるまで待つ間、大道具さんに見つかるかも!というシーンでドキドキ。

 屋上へ上がるための天窓を開けるときに、錠前か何かを高いところからカツーンと落として、やっべ!となるシーンでドキドキ。

 換気ダクトを通る時に、カジノ会場の真上を通る場所があり、なぜかそこだけダクトが網になってて、誰かがふっと見上げたら一巻の終わりじゃん!というシーンでハラハラ。

 なんとか売上金を強奪することに成功するも、翌朝の新聞の写真に、フランシスが偶然にもデカデカと写り込んでしまったことが発覚。これでバレちゃうかも……ということで計画が変更されて、隠した金を早いとこ持ち出さなきゃ!ってなる。

 シャルルの指示を受けたフランシス、現金がぎっしり詰まったバッグを持って、シャルルに受け渡す場所まで来たのはいいけど、周りは警察だらけ。刑事がカジノの支配人と喋ってて、犯人の顔はわからないけど(強奪するとき目出し帽かぶってた)カバンはハッキリ見ました!とか言ってて、ここに置いてあるの見られたらバレるやん!と思いながらドキドキ。

 わざとらしい演出なんだけど、フランシスの立場に入り込んで観てると、すごいドキドキハラハラする。プールサイドで、刑事と支配人の会話を聞いてたフランシスは、手元のカバンが見つかりゃしないかと、どんどん不安になっていく。だって、すぐ後ろで、カバンの特徴を支配人が喋ってるんだよ。豚皮でどうこうとか、生成りのキャンバス地で底が革で、とかそんな話。それ目の前にあるから!ちょっと目線を移したら、すぐ見つかるから!

 そんなプレッシャーに耐えかねてパニクったフランシス。刑事たちが遠ざかった隙に、何を思ったか、札束がぎっしり詰まった2つのカバンを、プールに沈めちゃう。何しとんねん!そんなんアカンに決まっとるやろがい!と観てるこっちは思うわけ。プールの反対側で新聞読みながらカフェオレ飲んでるシャルルも、フランシスの行動を見てそう思ったはず。あいつ何してくれとんねん!て。

 プールの底に沈んだカバンを見て、なんとなくホッとしたフランシスなんだけど、実は全然ホッとしてる場合じゃないんだけど、ふと水面を見ると、札束がひとつ、プカ~と浮いてくるわけ。プールの給水口から、水がドバーッと出てきて、その勢いで水流が巻き起こったせいか、水底のカバンの口がほわ~っと開いて、そっからどんどん札束が浮いてくるわけ。しまいには、プールの水面が札束で埋め尽くされちゃう。

 んで、プールサイドで仕事してたウエイターか誰かが「みんな!札束だよ!」って騒ぎだして、シャルルもフランシスも、呆然とそれを眺める、というところで映画は終わる。

 あんだけドキドキハラハラした割には、終わり方が間抜けであっけない。フランシスのバカ!アホ!スカポンタン!て言いたくなる。こんなヤツと手を組んだシャルルも大概やな、と言いたくなる。そんな映画だった。これ名作か!?名作なのかなぁ。よくわからん。たぶん名作なんでしょう。モノクロ映画だし。映画はモノクロってだけで名作感出るから。

 でも、本編中で随所に流れていた曲は、聞いたことのあるメロディーだった。たぶんテレビCMとか、いろいろなところで使われてる名曲だと思う。映画自体はわからんけど、曲は確かに名曲だわ。

 ということで、本日はこれにてお粗末。

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