ほらあれは2人のかくれが
ひみつのメモリーoh
「イマジナリーフレンド」というものをご存じだろうか。
直訳的に言えば「空想上の友人」ということになる。
空想上の存在だから、もちろん他人からは見えないが、まるで独自の人格を持っているように振る舞い、本人と会話したりする。
実を言うと、私にもイマジナリーフレンドが存在する。彼に出会ったのは、小学4年生の頃だった。その頃、借家から一戸建てに引っ越して環境が変わったのと同時に、姉が中学校に上がったり、それまで一緒に遊んでいた幼馴染と離れたりして、孤独を感じていたのかもしれない。
彼はアニメ絵の少年で、バビル二世に似ている。しかし着ているのは体操服だ。超能力があるので、私とテレパシーで交信できる。だから、私にイマジナリーフレンドがいることは家族も知らない。声に出して会話することがないからだ。
ただ、夢の中で会話しているのを、寝言として嫁さんに聞かれたことがある。起きてから嫁さんに言われた断片的な内容と、私が夢の中で彼と話していた内容が一致したことで、それがわかった。とはいえ、寝言なので怪しまれたりすることはなかった。
大人になってからは、それほど現れなくなったが、失業したときや、彼女と別れた時など、精神的に落ち込んでいると、私を励ましに現れたりした。
だが不思議なことに、結婚して子どもが生まれると、以前より頻繁に現れるようになった。それは、私が平日休みで一人ボンヤリしている時に限っている。
頻繁に現れるのだが、あまり会話はしない。なんとなく”ふたり”でボンヤリしている。その彼が、最近徐々にリアルになってきている。もしかしたら、子どもの成長と関係があるかもしれないと思っている。
子どもが小学校に上がり、知識や考える力をつけ、少しずつ複雑な会話ができるようになってきた頃から、彼の姿はリアルになっていった。いつの間にか、アニメ絵ではなく、三次元の、普通の男性の姿になっていた。
先日、私が寝ている時に、嫁さんの話し声が聞こえた。誰と話しているのだろう。相手の声は……彼のものだった。なぜ私のイマジナリーフレンドである彼と、嫁さんが会話しているのだろう。そんなバカなことがあるものか。
「へぇ~、そんな話、初めて聞いた」と、嫁さんの声がする。
「うん。息子氏が小学校に上がるまでは、たまに見えてたんだけどね。最近は影が薄くなってきたみたいで」と、彼が喋っている。
「そろそろ彼とも別れる時が来てるのかもしれないな」
彼って、誰のことだ?
まさか
……
ということで、久しぶりにショートショートを書いてみた。
「シックスセンス」的なオチ。
本日はこれにてお粗末。
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