The land is cloaked in deepest blue
The shadow of eagles across the moon
2016年の夏に、テレビで放映されていた「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」の2期である。前作を最初から追っていたので、2期はわりと楽しみにしていた。
しかしリアルタイムではなかなか時間を取れず、録画したものを休日にまとめて観るスタイルに。最近ようやく時間が取れたので、8話まで観た感想。
1期と2期の間に劇場版があるのだが、それは近場の劇場で上映されなかったので断念した。スピンオフ的な話らしいので、観ていなくても本編の流れを理解するには支障ないはずだ。
登場人物は、前作からメインの2人が続投するだけで、あとはみな新顔ばかり。前作とは繋がりのない、新しい物語が始まる。
主人公・殤不患(ショウフカン)は、「魔剣目録」という、魔剣のリストが載った巻物を持って流浪の旅を続けている。これは単なる目録ではなくて、魔剣そのものが封じ込められた巻物で、殤不患はそれを狙う悪者から守るのに相応しい隠し場所を探しているのだ。
最初に出てくるのは、悪の親玉の手先である毒使いの女・蠍瓔珞(カツエイラク)。なんだかんだでうまいこと巻物の一部をもぎとり、魔剣2振りを手にする。こいつは最初のほうだけで役目を終えるかと思いきや、物語の半分以上が過ぎた時点でまだ生きている。しかし魔剣に憑りつかれてヤバイ状態。
新たに登場する流浪の僧・諦空(テイクウ)とのやりとりで、彼女の心情が深く掘り下げられる場面もあり、その哲学的な味付けが物語に彩を添えている。意外と重要な役回りなのだが、考えてみればこれはアニメではなく人形劇だ。装飾の細かいメインキャラともなれば、人形を1体作るのにも莫大な手間と費用がかかるはず。それだけのコストをかけたキャラクターを、ちょい役で消費するなどあり得ないではないか。
最近のCGアニメではあまり関係ないかもしれないが、セルアニメでは、描き込みの細かいキャラクターは登場シーンや回数が少ないほうが低コストだ。しかし人形劇はその逆で、キャラクターを作るのは大変なコストだが、一度作ってしまえば何度でも使いまわしができる。多く使いまわせば、その分制作コストは回収できるはずだ。
この人形劇では、顔のアップが多い。人形の顔のクオリティが、アップに耐えるレベルということだろう。確かに、この人形たちは美しい。アニメやマンガの世界から抜け出して来たような造形だ。置いてあるだけでも鑑賞に堪えうる作品、と言っても過言ではなかろう。
それらが、剣をふるって舞うように跳ねる、飛ぶ、走る。そこへ、CGによるSFXが合成され、剣戟や打撃のアクションがさらに映える。そういったアクションや効果ももちろん好きなのだが、普通にキャラクター同士が会話している時の演技も好きだ。細かい表情やしぐさを人形で表すことはできないので、人間やアニメのキャラが演じるより大げさな動きと、決めのポーズが多用される。人形劇独特の演技と演出があり、そこに味わいがある。
アニメやCGに慣れ親しんだ、日本の若い世代にはあまり刺さらないかもしれないが、NHKの人形劇を見て育った私からすると、台湾発のこの新しい布袋劇は、人形劇の進化と可能性を見せられたような興奮を覚えるのだ。これはおそらく、CGとの融合によって進化した、最近の特撮を見たときに感じるものと似ている。
物理法則に制約を受けない二次元ではなく、三次元の世界に実在するものが、その制約の中で動き、現実には不可能なファンタジーの世界をいかに表現するか。そういった創意工夫の妙とでも言うべきものを、この人形劇の中に感じるのだ。
二次元のアニメやCGには、物理法則の制約を受けないからこそ失われる「何か」がある。私は特撮や人形劇の中で、その「何か」を観たいのだろう、と思う。
というわけで、本日はこれにてお粗末。
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