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【読書感想文】ソラリス【古典SFを読む】後編

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ある日 夢が終って

ある日 目を閉じる

 

 スタニスワフ・レムの『ソラリス』(沼野充義・訳、ハヤカワ文庫SF)、読書感想文・後編です。

 前編はこちら

gokumatrix.hateblo.jp

 

 この作品から私が感じたテーマは大きく2つあり、ひとつは「意識と関係」で、これについては前編で書きました。

 今回はもうひとつのテーマ「未知なるものとの邂逅」です。

 主人公ケルヴィンをはじめとするステーションのメンバー、そして人類全体がソラリスとの出会いによって何をどう感じたのか。

 ソラリス発見から、人類はかの惑星について様々な仮説を立て、その生命のようなふるまいを、人類の思考形態に合わせて解釈しようとしてきました。それらは「ソラリス学」という広大な知識体系として蓄積されますが、長い年月をかけた観測と論証は、意味をなさない無用のがらくたに過ぎなかったのです。

 人類のどんな解釈にも、どんな仮説にも副うことなく、人の理解の範疇を超えた活動を示し続けるソラリスを前に、人類は、またケルヴィンたちは途方に暮れてしまいます。

 実に様々な形態、様々な活動を見せながら、その意味を決してくみ取ることのできない存在。圧倒的かつ絶対的な未知。いかにそれらを観察し、記録し、名付け、解釈しようとも、肝心のその「意味」だけは掴むことができない。

 人にとっての「意味」を当てはめることのできない存在であるソラリスは、ついにあらゆる解釈や考証、意味付けといった人の側の努力を無に帰し、人が信じて疑わなかった価値観を根底から覆し、無力化します。

 その、「知」の及ばないものとしての、ソラリスの描写、表現が、読む人の心から本当に何かを奪い去っていきます。自らの意識や活動、それらの持つ意味といったものが、いかに曖昧で根拠の薄いものであるか。

 人は、未知なるものと相対するとき、否応なしに全ての知を奪われます。あるいは知が通用しないことを思い知らされます。ゆえに、人は未知なるものを、自らの拠り所としている知が奪われることを恐れる。未知なるものを前にして、恐れるべきか、喜ぶべきかもわからない、何の判断も、推測も、行動も許されない状態を恐れます。

 作品の後半で語られる、「ソラリス学」の狂騒と瓦解の物語、そしてソラリスが現実に見せる、それまでのソラリス学を無に帰する未知の活動。このくだりを読みながら、私は実際に自分の中から、知が駆逐されてしまうのを感じました。

 あらゆる言葉を尽くして語り、解釈し、理知で補足しようとして叶わないもの。それはまさに人生そのものではないかと思い至りました。幾千もの昨日の中に、今日という一日はどこにも見つかりません。振り返れば知識と経験の海がありますが、眼前に広がるのは、これまで一度も見たことのない風景です。

 この作品は、昨年暮れにNHKの番組「100分de名著」で取り上げられました。そのテキストを単行本と一緒に買ったので、これからあとがきを読み終わったら、そちらのテキストで、訳者である沼野充義さんの解説を読んで、さらに深く『ソラリス』について掘り下げてみたいと思っています。

 

 ではまた!

 

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