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【読書感想文】ソラリス【古典SFを読む】前編

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夢を見せておくれ 幻でもいい

目覚めの朝遥か 夢で会えるね

 

 ようやく読み終えました。

 スタニスワフ・レムの『ソラリス』(沼野充義・訳、ハヤカワ文庫SF)です。

 期待に違わず難解でした。難解というよりは、未知なる世界。わかるとかわからないとかいう次元の話じゃありませんでした。いえ、ある意味ではわかりみが深すぎるし、ある意味ではチンプンカンプンとでも言いましょうか。

 一番難解だと感じたのは、ビジュアル面の描写です。本を読むときはだいたい、読みながら情景を頭の中にイメージしますでしょう?その描写がかなり複雑で、イメージし辛い。なんとなく、ぼんやりとはイメージが沸きますが、何しろ実際には誰も見たことのない未知の惑星の話なので、本当のイメージは著者の頭の中にしかないわけですよ。

 いくら文章を駆使したところで、イメージがそのまんま伝わるわけではないので、その文章をイメージとして脳内デコードする作業が非常に辛かったです。とにかく、ソラリスの海は黒くて赤いんだな、とか、ミモイドは複雑怪奇な形状なんだな、とか、うっすらぼんやりしたイメージしか思い浮かべることができませんでした。

 しかし、主人公やその恋人(のレプリカ)の心情描写、ステーションに滞在する他のメンバーとのやり取りなどは、とてもわかりやすく、心にスッと入ってくる感じがしました。

 ソラリスの海によって生み出された恋人・ハリーのレプリカは、主人公・ケルヴィンの記憶から作り出された存在ですが、それ自身の意識と記憶を持っています。それが、自身の存在の秘密、オリジナルではなくコピーであるという事実を知る、その恐怖と絶望。

 ここで私は、なるほどこれは弐瓶勉のマンガ『シドニアの騎士』に登場する「奇居子(がうな)」のモデルなんだなと気づきました。何らかの意思を持った謎の生命体。しかし人類とは全くコミュニケーションがとれず、敵か味方かもわからない。相手には、敵や味方といった概念すらないのかもしれない。そういう存在。

 ソラリスの海から生まれたハリーは、まさにシドニアの騎士における<仄 炒(ほのか しょう)>です。奇居子に取り込まれ、奇居子によって意識や記憶までコピーされた存在。死んだ人間が、記憶や意識までコピーされて蘇るけれど、それはもはや人間とは呼べない。

 本人にとっても、生前のその人を知る人間にとっても、それは悲劇としか言いようのない現象です。しかし同時に、果たして人間とは何か、関係とは何かという問題も提示します。肉体が変わっていたとしても、意識や記憶が元の人間と同じだとするならば、「それ」は一体どういう存在なのか。

 例えば、AIが発達して、故人の生前の様々な言動や趣味嗜好、癖や価値観などを取り込み、生前の故人と同じ声で、同じような反応を示すAIが造られたとしたら、そこに意識があろうとなかろうと、人はそれを故人と錯覚するのではないか。これは「哲学的ゾンビ」の話にも繋がるテーマです。

 ハリーは、自身がオリジナルでないことを知って、(おそらく)その絶望から自殺に至ります。しかし、オリジナルとは一体どういうことなのか。私たちは、果たして本当にオリジナルな存在と言えるのかどうか。また、オリジナルであることが心の拠り所になるのかどうか。

 もしも、私が誰かの意識と記憶をコピーして、ほんの1時間前に造られた存在だとしたら、それは一体私にとってどんな問題があるだろうか。という疑問が浮かびました。

 とりあえず今回は前編として「コピーされた存在」というテーマで考えました。

 もうひとつ、私が『ソラリス』で感じた大きなテーマ「未知」について、後編でまとめてみたいと思います。

 ではまた!

 

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