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【ショートショート】年金コールドスリープ【とある増田記事より】

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 僕が消えてしまった日から

 どれだけの時間を無くしたのだろう? 

 

 とある増田記事からヒントを得て作った話です。

*****

 N氏は、とあるバイト募集サイトで奇妙な案件を見つけた。

 「コールドスリープ臨床試験 40年 諸費用全額弊社負担」

 30歳にしてリストラに遭い、途方に暮れていたN氏には、魅力的なバイトに見えた。今からコールドスリープで40年経てば、目が覚めた頃には70歳。年金がもらえる年齢だ。それまでの費用を負担してくれるということは、年金保険料も支払ってくれるということなのだろうか。

 掲載されている会社に問い合わせてみると、コールドスリープにかかる費用に加えて、年金保険料も生命保険料も負担してくれるとのことだった。バイト代は定期預金口座に預けられ、さらに40年後に無事目覚めれば、ボーナスも支給されるという。コールドスリープで眠っている間は、その会社の従業員として扱われるというわけだ。

 ただし状況により、40年が30年になったり、あるいは60年になる場合もあるらしい。また、記憶を失ったり、最悪、目覚めないまま死亡する恐れもある。そのあたりのリスクを考えれば、妥当な報酬と言えるのかもしれない。

 N氏は早速コールドスリープの治験バイトに応募することにした。N氏以外にも何人か応募者がいたが、N氏のように現在の生活に不安を抱えている者、少しでも寿命を延ばしたい高齢者、未来の医療に望みをかける難病患者などだった。

 N氏は無事に採用され、いくつかの診断を受け、様々な手続きを経て、40年間のコールドスリープに入った。

 N氏が目覚めるたとき、最初に見えたのは、白衣を着た会社の担当者の顔だった。まるで一晩ぐっすり眠っただけのような、すっきりした目覚めだった。しかしカレンダーを確認すると、そこはきっちり40年後の世界だった。まるでタイムマシンにでも乗ったような気分だ。鏡を見ても、全く老化が進んでいない。これならば、バイト代と年金で遊んで暮らせるだろう。

 しかし、人生はそれほど甘くはなかった。

 医療の進歩で飛躍的に健康寿命が延びたため、年金受給開始年齢が100歳まで伸びたのだ。つまりN氏が年金をもらえるのはあと30年後。しかも平均寿命は130歳だという。コールドスリープに入る前とあまり状況は変わっていなかった。

 70歳にして再び就職活動を始めたN氏だったが、40年後の世界は劇的とは言わないまでも、様々な変化があり、N氏が働けるような仕事はなかなか見つからなかった。そんな中、N氏は見覚えのあるバイトの募集案件を見つけた。

 「コールドスリープ臨床試験 100年 諸費用全額弊社負担」

 N氏はその会社に問い合わせてみることにした。

***** 

SFファンに聞きたいんだけど

その頃には受給開始年齢が100歳になってるはず。

2018/05/30 21:22

 もしもコールドスリープの技術が確立されたとしても、それで解決できる問題はごく狭い範囲に限られるだろうな、と思います。そして同時に、解決できる問題以上に、別の問題が出てくるだろうとも思います。


 ではまた!

 

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