正しいものは何なのか それがこの胸に解るまで
息子氏が保育園に入園した頃、保母さんから愛称で呼ばれ始めたのを機に、家でも愛称で呼ぶようになりました。仮に名前がリョウイチとしたら「リョウくん」みたいな呼び方です。
物心ついてからも、ずっとその愛称で呼んでいたので、本人の一人称も自然と愛称になっていました。つまり「自分のことさっちゃんて呼ぶんだよ」状態です。
年長組にあがるころ、ふと思いました。このまま自分のことを愛称で呼んでいると、いつか周りの子どもから「おかしい」という声が上がるだろうなと。
保育園児ならまだ許されるとしても、小学生になったら、周りには何歳も年上の上級生がいます。彼らと関わる時、もし自分のことを愛称で呼んでいたら、必ずからかわれるでしょう。女子ならまだしも、男子が自分を愛称で呼んでいたら、間違いなく「ターゲット」にされるでしょう。
懸念を抱いた私は、小学校に上がる前に、なんとか一人称を「ぼく」か「おれ」に修正したいと思って、何度か息子氏に提案しました。しかし言い慣れた呼び方を変えることに違和感があるのか、恥ずかしいのか、その両方なのか、息子氏は頑としてその提案を受け入れませんでした。私は、小学校の子ども社会に出て、容赦ない言葉でその一人称をからかわれることで、いずれ修正されるだろうとあきらめました。息子氏が傷つくことは本意ではありませんが、それも社会の厳しさです。
そうこうするうちに、息子氏は小学校に入学しました。
一年生の前半あたりは、まだ愛称で通していました。子どもが少ない地域なので、クラスの同級生は、同じ保育園から上がった子どもがほとんどです。保育園当時からの一人称は、そのまま受け入れられていたようです。
が、一年生の終わりごろに、ある出来事が。
仕事から帰ると、息子氏の元気がありません。妻に聞くと、児童館で遊んでいる時に、上級生から「気持ち悪い」と言われて落ち込んでいるとのこと。その時は、なぜそんなことを言われたのかわかりませんでした。
しかし、それ以降、息子氏は自分のことを愛称で呼ばなくなりました。そのことに気づいたのは、しばらく経ってからです。では息子氏の一人称はどうなったかと思って注意していると、どうやら「こっち」と言っているようでした。
「こっち」て。それもどうなの。
「ぼく」や「おれ」はなぜか恥ずかしいらしく、落ち着いたのが「こっち」。
またそのうち、誰かに何か言われて修正されるのでしょう。
お子様がいる方の中には、似たようなことを経験した方もいるんじゃないでしょうか。
ではまた!