How about some sweet and sour Apples?
今日も今日とてショートショート。
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むかしむかし、あるところに、それはそれは美しい森がありました。
森の真ん中には、大きなりんごの木が生えていました。
りんごの木は、そこに森ができる前からその場所に生えていて、もう何万年も生きている、森の王様でした。毎年、綺麗な白い花を咲かせるのですが、一度としてりんごが実ったことはありませんでした。
ところが、ある時、りんごの木にひとつだけ実がなりました。小さなりんごの実でしたが、それは黄金のりんごでした。
黄金のりんごは少しずつ少しずつ大きくなりました。何年も何年も落ちることなく、成長し続けました。そうしてりんごの実が生ってから、千年が経ちました。
ある時、りんごの木の森に、年老いた夫婦がやってきました。
「おじいさん、あんなところに黄金色のりんごがなっていますよ」
「ほんとうじゃ、なんと大きなりんごじゃろうか」
「わたしたちより大きなりんごですね」
「よし、どんな味がするか食べてみよう」
おじいさんが、木を切るために持っていた斧を振り上げました。すると、りんごはひとりでに木から落ちて、ずしんと大きな地響きを立てると、その場で真っ二つに割れてしまいました。
そしてなんと、りんごの中から、裸ん坊の男が一人現れました。おじいさんはびっくりして、ふがふが言いながら尻もちをついてしまいました。
後ろで見ていたおばあさんも、たいへん驚きましたが、少しばかり頬を赤らめながら、その男に尋ねました。
「お、おまえさんは一体、何者なんだい?」
りんごの中から出てきた男は言いました。
「私の名はアダム。ジョナゴールドの妖精です」
「あ、あだむ?じょなご……なんだって?」
アダムはそれ以上何も言わず、ふわりと宙に浮かぶと、東の空へ飛んで行ってしまいました。
おじいさんとおばあさんはしばらく呆然としていましたが、やがて気を取り直すと、そこに残ったりんごの欠片を食べてみました。実はとても甘くて、ほどよい酸味があり、食感はサクサクとして美味しかったので、ふたりは残った欠片を拾い集めて村に持ち帰り、村人たちに分け与えました。
村ではそのりんごにまつわる不思議な出来事を「りんご太郎の伝説」として、後世まで語り継いだということです。
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りんごの季節は終りましたが、ジョナゴールドは美味しいですよ。
ではまた!