先日、マジンガーZインフィニティを観てきた話を書きました。
最新のCGアニメ技術が、スーパーロボットをリアルに動かす様は感動ものでした。CGだからカメラワークも自由自在で、アクションシーンの迫力も見事です。そこでふと、昔のOVA(オリジナルヴィデオアニメーション)を思い出しました。『攻殻機動隊』で名を馳せた、士郎正宗のコミックを原作としたアニメ作品です。
たしか高校の友達が持っていたVHSビデオを貸してくれたのを観て、鳥肌が立ったのを覚えています。当時はもちろん3DのCGアニメーションはまだ実用レベルじゃなくて、あってもカクカクのポリゴンとかそんなレベル。シーンの一部には使われることもありましたが、いかにもCG使ってますよ的なアピールが強い実験的なものでした。
なので『ブラックマジック M-66』に登場するリアルな人型戦闘ロボ「M-66」が繰り広げる戦闘シーンはすべて手描きのセルアニメ。しかし、私は今に至るまで、この「M-66」にまさるアクションをアニメで観た記憶がありません。あくまで個人の観測範囲内の話ですけども。
M-66は人型戦闘ロボなので、基本的には人と同じような動作をするのですが、戦闘シーンとなると急に「機械人形」のような、人ではあり得ない動きをします。関節が変な方向に曲がったり、無茶な重心移動や跳躍をしたり、蜘蛛みたいな歩き方をしたり。
人型ではあるけど、人ではないから可能な動きというのがあるわけで、その表現が妙にリアルなんですよ。現実には存在しないものの動きを、あれだけ「リアル」に表現できるってすごいと思います。
CGのロボットは確かにリアルです。人の動きをそのままトレースしてアニメにしているのものもあり、そういう点でリアルなのは当たり前なんですけどね。だけどそのリアルが、存在しないものを描き出す時には制約になるわけですよ。人ではないものの動きを、人で再現することはできませんからね。
そこでセルアニメの強さというか、CGには難しい職人技みたいなものが生きてくる。CGでは動きが滑らかすぎて、コマが補完されすぎて、動きの緩急とかスピード感の表現が綺麗すぎると感じることがあります。
セルアニメだと、動画マンの腕ひとつで存在しないものの動きをリアルに再現できたりする。セルアニメに慣れたおっさんの目で観るからそう感じるだけだという可能性も捨てきれませんが。
アニメは、現実の世界にないものを表現できるから面白いわけで、それが現実に近づき過ぎればつまらなくなるのは当然の理。それを如実に感じるのが、アニメの肝である「動き」の表現です。
CGでアニメを作ってる人たちの技術力が向上すれば、つまりCGアニメにおける職人技が確立されれば、セルアニメの味に近づけることはできると思いますけどね。
CGが優れていると思うのは、細部まで緻密に作られた絵を(手描きに比べれば)楽に、破綻なく動かせるという点。あと(その気になれば)色が無制限に使えるところ。それがかつてのセルアニメのような、あり得ないけどリアルな動きを手に入れたら、もっと面白い作品ができるんじゃないでしょうか。
CGアニメを見慣れた若者にも、ぜひ『ブラックマジック M-66』を観て欲しいです。その上で、もっとすごいアクションを見せるCGアニメがあるぞと言う方は、おっさんに教えてください。よろしくお願いします。
ブラックマジックM66絵コンテ集 (Comic borne)
- 作者: 士郎正宗
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