突然ですが、僕は小学校3年生まで、借家に住んでいました。
コンクリート打ちっ放しの台所、六畳と四畳半の畳の部屋、一畳半の土間。小さな小さな借家でした。そこに家族5人で暮らしていました。土間で鈴虫を飼っていて、夏は鈴虫の声がしていました。窓には据え付けのエアコン、ではなく四角い扇風機がはめ込んでありましたが、故障していて動きませんでした。その動かない扇風機(換気扇?)のスイッチをパチパチいじって遊ぶのが好きでした。
その頃に使っていたトースターが、思い出してみると、今では全く見かけないタイプの変わったものでした。
トースターというと、前面の扉を開くオーブントースターか、ポップアップ式の焼けたら飛び出すタイプを思い浮かべるでしょう。でも当時家で使っていたトースターはそのどちらでもなく、スライド式とでも言うべきタイプのトースターでした。
形はポップアップトースターに似ています。食パンが2枚入ります。しかし食パンを入れるスリットが、トースターの上ではなくて横にあるのです。横のスリットに食パンを入れると、スリットの下にある細い波板のようなものが山型の弧を描いて動き、食パンを徐々に横移動させていきます。そして反対側に出てくる頃にはこんがり焼けたトースターの出来上がり、というやつでした。
ちょっと説明が分かりにくいかもしれませんのでもう少し詳しく書くと、食パンが通るスリットの下には、食パンを支える針金が2本あります。その2本の針金の間を、細い波板が上下しつつ、左右にも動く、つまり非常にゆっくりとした回転運動をしているわけです。
細い波板が、食パンを支える針金よりも上に来ると、食パンを持ち上げて少しだけ横にずらします。波板は下がりながら支えの針金の下に入ります。そこで反対側に移動し、また支えの針金の上に出てくるときに食パンを持ち上げ、横にずらし、また沈んで反対側に移動し……ということの繰り返しで、徐々に食パンを出口へと移動させていくわけです。
ところがこのスライド式はなかなか曲者で、食パンがスリットの中で電熱線にひっかかって、焦げてしまうことがままありました。なかなか出てこないなぁと思っていると、焦げ臭いにおいがしてきて、あーまた失敗した!となるわけです。
たぶんそういう失敗がよく起こったために、製品として絶滅してしまったのではないかと推測します。しかし、スリットからのぞき込んでみると、電熱線に赤く照らされた食パンが、じわじわ移動していく様子が面白くて、子供心に毎回わくわくしていたものです。
ネットで探してみたら、似たようなものが見つかりました。
このブログ記事の真ん中あたりに載っているのと同じタイプです。外観は全く覚えていないので、これと同じものだったかどうかはわかりません。しかしなんで貧乏な家にあんな珍しいトースターがあったのかな。大家さんに中古でもらったのかな。
というわけで、ちょっとしたことで思い出した珍しいトースターの話でした。そういえば昔、フライングトースターっていうスクリーンセーバーがありましたね。今でもあるのかな。
そんじゃまた!
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