心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

君に胸キュン

 勤め先の職場に、新人研修生が来ました。新卒とは思えない貫禄を備えた、分厚いオッサン風の男子と、線の細い女子。二人とも、自分の子供だとしてもおかしくない歳です。実際、若くして結婚した高校時代の同級生には、彼らと同い年の息子がいます。

 さて分厚いオッサンはどうでもいいとして、基本的に男ばかりの職場に、短期間とはいえうら若き乙女が混じるというのはとても新鮮なものです。心なしか、いやあからさまにみんな浮足立っているのが感じられます。

 かくいう私も、ナイスミドルこといい年こいたオッサンとして平静を装いつつ、密かに胸ときめいております。しかしこの胸のトキメキに自分でも少し戸惑い隠せない五月の風。

 若い頃は、もっとムラムラギラギラしていました。若くて可愛い女子、あるいはそうでない女子でさえ、もう女子というだけでほぼ見境なくギンギンでした。ギンギラギンにえげつなくでした。こんな若い女子が同じ職場にいようものなら、あんなことやこんなこと、ええそんなことまで?というくらい自由な妄想の翼をはためかせたものです。純粋さのかけらもなくただ欲望を垂れ流しておりました。いえむしろ純粋に欲望のみを噴出させておりました。

 ところが、これも歳のせいなのかどうかわかりませんが、今職場にいる若い女子を見ても、そのような欲望はどこにも見当たらず、ただひたすらに胸キュンなのであります。

 上司の説明を聞くその立ち姿。心持ちつま先を内に、手は大切なものを隠すがごとく下腹部の前に重ねられ、細い首をときおり傾げては頷く。吹けば飛びそうな、儚く頼りないその姿を見るだけで、オッサンはもうキュン死に寸前です。酸欠覚悟で吹きまくってもそよとすら動かなさそうなうちの奥方にこの儚さは装備されていませんがどこで買えますか。

 まさかこれが世に言う「萌え~」なのでありましょうか。オタク趣味のくせに二次元女子には心微動だにしないこの私が、三次元女子に萌え~なのでしょうか。

 いくつもの……いや、いくつかの色恋沙汰をくぐり抜けてきた経験からはっきり申し上げますが、これは断じて性欲や恋愛感情の類ではございませぬ。私はかつてこのような感情を抱いたことがありませんでした。彼女はひたすらに可愛いのです。ひたすらに守ってあげたいなのです。そしてひたすらに胸がキュンキュンするのであります。

 別に、性欲や恋愛感情でないからと言って、この気持ちが純粋で綺麗なものだと言うつもりは毛頭ございません。オッサンが若い女子に胸キュンしてる時点で十分キモいことは承知の上です。

 あるいはもしかして、自分に娘がいたらこんな気持ちになるのでしょうか。娘とはこんなにも可愛いものでしょうか。息子は十分に可愛いのですが、これは息子を可愛いと思う気持ちとはまた別種の感覚であります。もしそうであるならば……娘ヤバい。娘がいたらキュン死に間違いなしです。私は毎日萌え狂うでありましょう。

 そういえば、40を過ぎたあたりから、あるいは息子ができてから、若い男子も可愛いと思うようになりました。大人になってからは、中学生くらいまではまだ子供として可愛いと思っていましたが、さらにオッサンになると20代後半くらいでも可愛いと思えるようになってきました。今の職場で一緒に仕事をしている若い男子など、本当にピチピチしてて可愛いなと思います。私はノンケですから、そこに性的な含みはありませんし、若い女子のように胸キュンもしませんが。若い頃は、もう体の出来上がった毛生え男が可愛いなんてこれっぽちも思わなかったし、むしろめっぽう男嫌いでしたが、歳をとると意外な心境の変化が起こるものですな。

 

君に胸キュン。 [EPレコード 7inch]

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ギンギラギンにさりげなく (近藤真彦 : オリジナル歌手)

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