心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

黒歴史の恐ろしさ

 先日、実家に帰った時のことでした。

 実家を出て十数年経ちますが、ごくまの部屋は大して整理されておらず、押入れやタンスや本棚は、ほぼそのままの状態で様々な個人的歴史の遺物を内包しております。

 昔の彼女や、彼女でない人からもらった、しょっぱい思い出が蘇る写真やおてまみ。中国伝統の健康器具・健身球。昔使ってたPCのマニュアルやカタログ、3.5インチフロッピーに入ったドライバソフト。なんで買ったのかわからない、そしてなんで捨てないのかわからないガラクタ類などなど。

 そんな中に、本棚の隅っこに収まった数冊のノートを見つけました。小説や漫画のネタ帳。日記。夢日記まであります。若かりし頃はこんなもの書いてたんだなぁと少しの感慨を覚えつつ、ちょっとブログのネタにでもならないかと思って現在住んでいる家に持ち帰りました。

 中身はもちろん恥ずかしいものばかり。それでも今なら笑って晒すこともできるだろうとタカをくくって読み始めました。若き日の苦悩をつづった日記、わけのわからない夢の記録、どこかで見たような小説や漫画の設定とあらすじ。

 少しばかりニヤつきながら、若気の至りもはなはだしい、青臭い心情が書かれたページを繰る手が止まりました。かれこれ20年以上前に綴られた、恋愛に関する悩みと……ぽ……ポエム。のようなもの。

 あかん。これは完全にあかんやつやで。いくら若気の至りとはいえ、いくら匿名のブログとはいえ、人様の目にさらしてはいけないものがこの世にはあると思い知った瞬間でした。あなおそろしや。

 恋は盲目と申しますが、己さえ見失い、かほどに醜悪な文章を書かせてしまうほどの魔力を持っていたものかと、今更ながら背筋の寒くなる思いでございます。若さゆえの過ちということを差し引いたとしても、これは痛い。痛すぎる。不惑の40代をここまで痛めつける力を持った黒歴史。決して侮ってはなりませんぞ。

 実家の押入れや本棚に眠る、いまだ処分されない黒歴史に心当たりのある方、ゆめゆめご用心を怠りませぬよう……。