心は空気で出来ている

空気を読むな、呼吸しろ。

姉を見送るの巻

 先日、姉が遊びに来ました。
 子供のいない姉は、息子をえらく可愛がってくれてて、月に一度は遊びに行ったり、遊びに来たりしています。3歳になって、いろいろとわがままを言うようになってからは、度が過ぎるとたまに叱ることもあるんですが、そんなことも含めて息子の相手をするのが楽しいようです。
 その日は、家で昼食を一緒に食べてから、ドライブに行くことになりました。息子は車に乗ってどこかへ出かけるのが好きで、目的地に着くことよりも、車に乗っていること自体が好きみたいです。だから、移動中に目的地がころころ変わることもあります。
 そして困ったことに、高速道路が大好きで、一区間乗ったら行き過ぎてしまうような近場に行くときでも、高速道路で行きたいとか言い出します。ひどいときはスーパーの帰り道で高速道路に乗りたいとか言い出しやがります。要するに、とにかく車に乗ってたいんですよね。自分も車を運転するのが好きなので、ついつい息子の要望に応えながら自分が楽しんでたりします。
 その日も、目的地に向かう途中で高速道路高速道路とうるさく言い出したので、高速道路を一区間だけ走って、そこから息子にとっては初めての山道ドライブに向かいました。この時点で、最初の目的地はすっかり忘れ去られています。
 山腹の、展望台のある広場でしばらく遊んでから帰路についたんですが、そこでもまた高速道路高速道路と言い出しました。姉がなんとか宥めようとしてくれましたが、なかなか収まりがつかず、しつこくぐずり始めました。
 そんな時はまず間違いなく眠いんですよね。眠くなると機嫌が悪くなって、やたらとわがままを言い出します。今回もそのパターンで、ぐずってるうちにだんだん言うことが支離滅裂になってきて、まともに相手をするのが難しくなってきました。
 そこで、あれやこれやと飛び出してくる息子の要求を、ひとつだけ聞いてやります。なるべく簡単に済むことを。この時は「コンビニでジュースを買う」でした。姉が荒れる息子を宥めながら、コンビニでジュースとお菓子を買ってくれて、なんとかその場は収まり、無事家に辿り着くことができました。
 家に着いた頃には、眠気のピークを過ぎたのか、息子の機嫌もすっかり良くなり、トムとジェリーのDVDを見ながら楽しく過ごしました。
 姉が帰る時間になり、駐車場へ見送りに出ると、息子は手を振りながら「また遊びに来てねー!」と、車のドア越しに叫んでました。もうそんなことが言えるようになったんだなぁと、わが子の成長に少し感心していました。走っていく車を追いかけながら、何度も何度も「また来てねー!」と叫ぶ息子。姉もさぞかし嬉しかったことでしょう。そんな心あたたまるシーンに、ちょっと心がじんとしました。親ばかですね。
 やがて姉の車がゆっくりと角を曲がり、見えなくなりました。そこで息子が驚愕のひとこと。
 「よし、行ったー!」
 おーい!名残惜しいんじゃなかったのかよ!こいつ、見えなくなった途端に手のひら返しやがったよ!そんなこと、思ってても言うなよ!しかもでかい声でガッツポーズまでつけて。思わず、隣にいた嫁と爆笑してしまいました。
 どうやら、トムとジェリーの続きを早く観たかったらしく、そそくさと家に戻ってテレビの前に座ってました。さっきとはまた別の意味で、息子の成長を実感しました。自分が思っていたより、こいつはさらに先を行ってたんだなぁと、妙に感心した出来事でした。